命を断とうと樹海に足を踏み入れた少女・サチコは、首だけの姿になったゾンビの少女と出会う。「私の身体を探してほしい」と、二人で樹海を散策する中で、サチコは少しずつ生きる気持ちを取り戻していく。絶望した少女とゾンビの少女が織りなす不思議なロードムービー『死にぞこないのフジコとサチコ』。
首だけの姿になったゾンビの少女と、人生に絶望した少女が樹海をさまよい歩く不思議な作品を描いたのは、漫画家やイラストレーターとして活動するフナヤマヤスアキさん(@phenome_f)。淡々と進むストーリーや、何気ない会話の中に、生きる希望を感じさせるメッセージを取り入れたこの作品は、11万を超えるインプレッションを記録しコアな人気を得た。
この不思議なストーリーはどのように発想され、なぜこうした作品を描こうと考えたのか。作者であるフナヤマさんに話を聞いた。また、この記事では本作をはじめ、話題作もピックアップし紹介する。
ゾンビという希望
仙台にあるデザイン専門学校を卒業後、デザインの制作会社に勤める傍らで、オリジナル作品限定の同人誌「コミティア」で創作活動を続けていたフナヤマさん。プロとして歩むようになったのは、ひょんなきっかけからだと話す。
「約13年間、会社員をしていましたが、諸事情で会社を退職することになりました。そのタイミングで、『エレクトロジー』(GetNavi web)という漫画連載が始まることになったので、漫画家とイラストレーターとしてフリーランスになり、現在にいたります」
ひとつの特長となっているのが、絵柄の親しみやすさ。ある世代にとっては懐かしさを感じるが、その点については次のように語ってくれた。
「もともと原稿用紙に硬筆の筆ペンなどで描いていたのですが、現在ではiPadで描いています。どちらにしろ、手書き感を感じられるような絵を意識しています。コマの枠線以外はなるべくフリーハンドで描くなど。あと、幼い頃からスタジオジブリのアニメが好きだった影響もあると思います」
そして、本作『死にぞこないのフチコとサチコ』については、どのような発想から生まれたのだろうか。創作のきっかけについて教えてもらった。
「ホラー映画が好きなので、ゾンビが出てくる話を描いてみたいと思っていたのが始まりです。もし、自分がゾンビになったらどう生きていこうかと。物理的には死んでいるのですが……なるべくポジティブに考えてみたら、そのゾンビの性質次第では、そっちの道で生きていくのも悪くないんじゃないか?という都合の良い発想から物語が生まれました。最初は太ったおじさんとゾンビ少女のラブストーリーで、ネームを描いて数年経っていたのですが、改めて読むとおじさんの気持ちを描ききれないと感じ、女の子同士のロードムービーに方向転換しました」
今後の創作活動については、「新しい連載作品など商業活動を充実させたいです。Twitterなどでもショート漫画やイラストを発表したいですし、とりあえず時間とモチベとネタがある限り何かしらは創作していきたいです。また、今回取り上げてくださった『死にぞこない〜』が気になった方は、Kindleなど各電子書籍ストアで配信していますので、ぜひご覧ください!」と、やる気十分。この情熱をベースに、次はどのような新たな作品を描いてくれるのか。見守り続けたい。
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