人気インド料理店を漫画家がリニューアル「漫画家はもっと幅広く活躍できる職業」

山本 鋼平 山本 鋼平
インド・パキスタン料理店「スパイスカフェ・フンザ」の外観=東京・葛西
インド・パキスタン料理店「スパイスカフェ・フンザ」の外観=東京・葛西

 東京・葛西の人気カレー店が今春、外装をリニューアルした。大学時代に初渡印し、本場の料理を研究してきた店主の思いに応え、デザインを手がけたのは漫画家だった。少し風変わりなタッグに話を聞いた。

 東京メトロ葛西駅から徒歩3分。インド・パキスタン料理「スパイスカフェ・フンザ」の店舗に到着。ウインドウ周りを、神殿とイスラム模様をモチーフとした外壁が彩る。漫画家の佐佐木あつしさんは「それまでは他のお店と同じように、メニューやチラシを壁にベタベタ貼っているものでした。せっかくの人気店なのに面白くないと思い、デザインしました」と語った。神殿の柱をモチーフとした主要なデザインはできたが、柱を彩るイスラム幾何学的模様に苦心した。「日本人には出てこない模様ですよね。パソコンにデータを入力して作図しました。実際に描くのも大変でした」と振り返った。

 パキスタン出身の夫とともに店を切り盛りするモハンマド久美子さん(48)は「評判が良くてうれしいです」と笑顔を見せる。もともと佐佐木さんとは知り合いで、親交を重ねる中で構想が実現したという。店内の壁には佐佐木さんが描いたイラストを展示。コミック調からアート風、水墨画風など多彩で「同じ人が描いたの、とよく驚かれます」と目を細めた。

 久美子さんは大学時代に初めてインドに渡り、カレーの魅力にとりつかれた。料理の研究を重ねる中で結婚、出産を経て2014年、同店をオープン。テレビ番組や芸能人のSNSに度々登場する人気店となった。日本では珍しいインド人シェフによって、ビーフやポークを使わない、インドの宗教環境に応じた食材を調理する。フンザはパキスタンの秘境の地名で、名作アニメ「風の谷のナウシカ」の舞台に似ているとするファンもいる。

 佐佐木さんは京都の高校を中退し、日本各地を放浪の末に上京。1986年に月刊少年マガジンでデビューした。SF、ギャグ、歴史物など多彩な作品を発表した。今回の外装デザインは初めての仕事だったが、企業マンガやPRマンガ、バブル期には企業ブースのデザインを手がけた経験が役立ったという。「知り合いの漫画家さんが家を新築する際、自分で描いた家の図案を見せたら、大工さんが『分かりやすい』と感激した逸話があります。漫画家はもっと幅広く活躍できる職業だと思います」。コミックのプロデューサー、オンライン美術展なども手がける。内壁に掲げられたイラスト同様、仕事も幅広い。

 久美子さんはリニューアルした店舗をさらに活用するつもりだ。ランチ、ディナー営業間の待機時間帯を活用してインド料理の教室、インド文化を伝える催し、当地の装飾品販売などを構想する。「子育てや家事、店の仕事は大変ですけれど、もっと自分を輝かせたい。アラフィフの星になりたいんです」と笑った。佐佐木さんも「僕の絵だけでなく、他の漫画家さんの絵も展示したい。僕たちもフンザでワークショップなどが開催できるかもしれない。葛西から文化を発信したい」と意気込んだ。

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