プリゴジン氏は〝亡命〟先のベラルーシで「粛清」か 「プーチンは絶対に許さない」日本在住の識者が明言

深月 ユリア 深月 ユリア
ウクライナ南東部ドニプロでロシア軍のミサイル攻撃がありガソリンスタンドが全焼(ロイター)
ウクライナ南東部ドニプロでロシア軍のミサイル攻撃がありガソリンスタンドが全焼(ロイター)

 ロシアで武装反乱を起こした民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏が26日、2日ぶりに通信アプリに音声を投稿し、首都モスクワへの進軍を取りやめ、撤収したと述べた。果たして、今後の動向はどうなるのか。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身で日本在住の識者に見解を聞いた。

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 エフゲニー・プリゴジン氏が23日に起こした反乱は、西側諸国の「内乱が長期化し、ウクライナ戦争どころでなくなるのではないか」という推測とは裏腹に、わずか24時間足らずで終結した。24日、首都モスクワを目指していたワグネルの部隊は撤退した。

 複数の西側諸国メディアによると、ロシアのペスコフ大統領報道官は「プーチン大統領がプリゴジン氏のウクライナ戦争でのこれまでの功績を考慮し、刑罰を科せずにベラルーシへの安全な移動を保証した」と表明したという。事実上の亡命である。

 しかし、インターネット上では「プリゴジンは暗殺されるのではないか」という憶測もある。ウクライナ出身の国際政治学者で、『ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟』などの著者、アンドリー・グレンコ氏によると、「今回の反乱により、ロシア国内の防衛体勢は脆弱(ぜいじゃく)で、スカスカである」ことが露呈したという。

 同氏は「ブリゴジンの反乱部隊はほぼ攻撃される事なく、堂々と幹線道路を数百キロ移動できたということは、ロシア国内の防衛体勢は脆弱でスカスカだということです。しかし、プリゴジンの目的は政権転覆ではなく、『ワグネル戦闘員が全員、ロシア防衛省と契約しなければならない』という新たなルールへの反発です。そうなれば、ワグネルは民間組織ではなくなりますからね。そして、ショイグ国防相と総司令官を更迭させること。また、プリゴジンには具体的なプランはなく、その場の勢いでモスクワに進軍しました。だから、勢いあるのは最初だけ。途中までうまくいっていたが、最後までやり切ることができなかったのもあります。だから、プリゴジンはプーチンに目的を伝え、プーチンが妥協した際に軍を撤退させました。もし、具体的な計画があれば政権を転覆できたかもしれません」と指摘した。

 では、プーチン大統領は自分に脅威を与えたプリゴジン氏を暗殺するか?

 グレンコ氏は「独裁者は一瞬でも自分に恐怖を与えた人を絶対に許せず、必ず復讐を考えます。プーチンは明らかに一瞬動揺しましたから、絶対に許せないでしょう。今ではなく、時間がたって、ワグネルの話題が報じられなくなってから、プリゴジンと反乱に加わった部隊を粛清すると思います。ベラルーシはロシアの支配下にあるから、処刑できますから」と推測した。

 今後、プーチン政権を転覆させるような新たな反乱が起きる可能性あるか?

 グレンコ氏は「今後、プーチンはロシアをさらなる全体主義化するでしょうね。反乱分子を監視し、粛清します。内乱は起きにくくなるでしょう」と予見した。

 ロシア国営テレビは26日に「武装反乱はいかなる場合でも鎮圧される」というプーチン大統領の演説を放送した。グレンコ氏は「ただし、 もしウクライナ軍がロシア軍を叩きのめした時に、偶然にもタイミングを合わせて反乱が起きれば。その時は政権転覆できるかもしれません。本格的で計画的な反乱が起きたら、ロシアはウクライナ戦争どころではなくなるでしょう」と指摘した。

 今後、ウクライナが日本に期待することは?

 グレンコ氏は「日本政府は防衛装備品の輸出ルール『防衛装備移転三原則』について、『非戦闘の目的なら殺傷能力ある武器を搭載しても輸出可能』だと解釈を変え、ウクライナに武器支援できる事になりました。ようやく日本が普通の民主主義諸国のスタンダードに近付いたということでしょう。次のステップとして武器輸出三原則と自衛隊法の見直しを期待します」という。

 日本を含めた西側諸国が支援するウクライナ軍の反転攻勢のタイミングで、2回目のロシア革命が起きて、プーチン政権が転覆する…という奇跡は起きるのか。

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