深刻な卵不足で注目される植物由来の「代替卵」 栄養価や安全性は?開発メーカーや専門家に聞く

深月 ユリア 深月 ユリア
代替卵の商品で調理したオムライス
代替卵の商品で調理したオムライス

 鳥インフルエンザの拡大で日本の「卵不足」が深刻になっている。卵の供給不足と価格の高騰化が懸念されている中、卵の代替商品も注目されている。ジャーナリストの深月ユリア氏が開発・販売している食品メーカーや専門家に話を聞いた。

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 鳥インフルエンザのまん延により、卵が供給不足になり、値段が高騰すると共に、「代替卵」が注目されている。代替卵は卵を使わず、植物油脂などで卵のような味・食感を生成した食品だ。

 日本ではキューピーが2021年6月に豆乳加工品をベースに、大部分を植物由来の原材料を使ったスクランブルエッグ風の業務用商品「HOBOTAMA」を発売して以降、複数の大手企業が代替卵市場に参入している。

 カゴメ株式会社 (本社・名古屋市) と、「2foods(トゥーフーズ)」というプラントベースフード(植物由来の食品)を開発・販売している株式会社TWO(本社・東京都渋谷区)が、「エバーエッグ」という代替卵の商品を共同開発し、昨年3月から販売している。

 同商品は冷凍用のほか、常温保存できるものもある。近年、地球環境やアニマル・ウェルフェアに対する関心が高まり、また食料危機にも対応できることから、サステナブル(地球環境が持続可能)な食として注目されている。

 カゴメ株式会社もプラントベースフードに市場拡大を狙っているようだ。同社の担当者は筆者の取材に対し、「当社では、プラントベースフードが拡大市場と考えており、現在、積極的に商品開発を行っております。野菜の知見やノウハウを生かして、今後も卵に限らず、さまざまなプラントベースフードを開発してまいります。エバーエッグは『新しい食の選択肢』として、こだわりの〝ふわとろ食感〟の『たまごじゃないたまご』をお楽しみいただきたいと考えております。特徴やメリットとしては『コレステロール0』であること、卵ではないため、加熱しても固まらず、お店で食べるような〝ふわとろ食感〟がレンジでチンするだけで、ご家庭でどなたでも失敗なくお楽しみいただける点です」と説明した。

 筆者が「エバーエッグ」でオムライスを作ったところ、卵を割ってかき混ぜる手間がかからない分、つまり「レンジでチンする」だけなので、調理が楽だった。味は卵より少しあっさりしているが、食感は卵のようにとろっとしていておいしかった。

 エバーエッグの栄養成分は、冷凍では130グラムあたりのタンパク質が14グラム、常温では130グラムあたりのタンパク質が12グラムほど。カロリーは冷凍が161カロリー、常温は101カロリーとのこと。そして、コレステロールは0グラムだ。卵より重量あたりのカロリーが低いが、タンパク質も少ないようだ。一方で、ゲル化剤や増粘剤などの微量の添加物も入っているようだ。エバーエッグは栄養学的には問題ないのだろうか。

 薬学博士で「食と安全研究会」会長の宮本貴世絵氏に取材したところ、同氏は「大手食品会社が開発し、成分が表示されていますので、安全な商品だと思います。『添加物が入っている』という批判もあるようですが、通常の卵にも成分は表示されませんが、入っていることあります。ただし、まだ新しい商品ですし、卵に比べタンパク質などの栄養は少ないので、毎日食べるのではなく、食材の一つとして取り入れていけば良いのではないでしょうか」と説明した。

 代替卵はサステナブルなたんぱく質として期待され、調理も卵より楽だが、今後の課題は、さらに栄養価を高いものとし、いかに安く生産できるかだろう。

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