全国各地の名物、グルメなどが気軽に買えて、いつも大盛況。百貨店などで定期的に開催される物産展を陰で支えるのがバイヤーだ。記者もなかなかお目にかかれない物を買うために、出かけることもある。
大阪・阪急うめだ本店で17日まで開催中の「北海道物産大会」を担当するスペシャリティコンテンツ企画1部マネージャーの榮川正治(えがわ・しょうじ)さん(55)は入社33年目のベテラン。支店勤務時代を含めて20年ほど前から催事の企画を担当しており、本店では2018、19年と北海道地区を担当。昨年から復帰した。
数多くある物産展の中でも「北海道」は一、二を争う人気。阪急うめだ本店では年に2回開催している。今回の企画に関しては10日間の期間で計4回、現地へ足を運んだ。「行かないと分からないことが、ほとんどなので。こちら(大阪)にいても同じ情報しかないですから」。最初から決め打ちして店に出向く方が効率はいいが、それだと次にはつながらない。
「種をまく出張もしておかないと、秋に何をするんですか?となると困っちゃいますからね」。北海道は広く、移動だけで1日が終わることもある。現地の取引先にも協力してもらいながら店を回ったり、最終列車で次の場所へ向かったりと、極力、無駄な時間を使わないように努力する。新規開拓、なじみの店も含めて顔を出すのは1日10件ほど。その中で培った人脈、地域の生の声から耳寄りな情報が入ってくる。それが今回だけでなく、のちのちも役立つ。
出店を依頼して断られても何回も足を運ぶ。全てがうまくいくわけではないが、熱意が通じることもある。電話やリモートで済ませようと思えば済ませられるが、「やっぱり行って、顔を見て話をすると、まあ、分かってくれることもありますから」と直接会うことの重要さを肌で感じている。
今回、初出店となる旭川のパン屋「みんなの大ぱん」は、昨秋のイベントで依頼したが断られた。その後も何度か電話して、顔を出してもなかなか首を縦に振ってくれなかった。店主からなぜパンなのか?と聞かれ、国際情勢も踏まえながら今回は国産の小麦を応援しようということで、なじみのあるパンにしたと企画意図を説明。誠意が実を結び、出店する運びとなった。
毎回、ただおいしいだけでなく、テーマに沿ったものを、どれだけそろえて、来場者に提供できるか。今回は他にも以前からある北海道のミルク応援企画として、20種類のソフトクリームを販売。地元画家の絵画も展示している。同業他社の情報も入ってくるが、ぶれることなく、自分のスタイルを貫く。
ネットなどで簡単に情報が手に入る時代でも、直接会った人だからこそ、得られる情報もある。「紋別にホタテをおいしく焼いてくれる小さなお店があるみたいで。知り合いから〝紋別にはいいところがいっぱいありますよ〟と言われています」と口ぶりからも、現地へ行きたい気持ちがあふれていた。
「踏み入れていない土地にも行ってみたいですね。年々、お客さまのニーズは上がっていますので、その期待に応えることも含めて勉強していかないと」。既に秋の企画の準備にも入っている。衰えぬ熱意、貪欲な姿勢が、これからも人気イベントを盛り上げる。