〝ふん〟闘する昆虫館が企画する「むしのうんこ展」が大人気 幼虫のうんこ、コオロギを使った昆虫食も販売

中江 寿 中江 寿
「むしのうんこ展」
「むしのうんこ展」

 思わずタイトルに目を引かれた。「むしのうんこ展」。兵庫県・伊丹市昆虫館が企画展として5月8日まで開催している。生きている証のうんこをとおして、昆虫のくらし、成長、多様性、事前との関わりを学ぶことができる。展示室にはカブトムシの幼虫、トンボ、ゴキブリ、バッタ、ナナフシなど、うんことセットでさまざまな昆虫が標本をされている。確かに、うんこの種類、形も多彩だ。

 会議で決まり、2004年にスタートして今回が5回目。新入社員の当時から現在も企画を担当する学芸員の角正(かくまさ)美雪さん(46)は「うんち、面白いねと。動物のうんちの展示はよくあるのに、昆虫は聞いたことがない。子どもが大好きなテーマだから、やってみようということで」と明かす。館内のスタッフからの拒否反応も特になかった。

 来場者の大半は幼稚園、保育所、小学校低学年の児童の団体や親子連れで、当初から非常に好評。「子どもは映像やクイズがとても楽しい感じです。大人の方もつられて真剣に見てしまうようで、アンケートでは『子どもに教えたい内容』『食べて排泄する大事さが伝わった』などの声が寄せられます」と話した。取材当日も幼稚園の団体が訪れていたが、「うんこだあ!」と最初は興味本位ではしゃいでいた園児たちも、徐々に展示物を真剣なまなざしで見つめていた。

 反響は来場者だけではない。関東のいくつかの博物館から、貸し出しの依頼が多くあるという。「動物のうんこと比較して、置きたいみたいですね」。これだけ、昆虫のうんこを所蔵している博物館、昆虫館は他には見当たらないらしい。

 また、開始当時の館長が開発した、昆虫のうんこを利用する染め物の体験講座も実施。試験の結果、UVカットの効果が高いことが実証されている。また、お茶の葉を食べる蛾の幼虫のうんこから作られたお茶、桑の葉を食べる蚕の幼虫のうんこを混ぜたクッキー、最近話題のコオロギを使った昆虫食も販売中だ。

 お茶を飲んだことがある角原さんいわく「紅茶のようなドクダミ茶のような。言われないと分からないですね」と違和感はない様子。記者は今回から販売された蚕の幼虫のうんこが入ったクッキーを食べてみた。変な癖はなく、あとからほんのりとお茶のような、桑の葉の風味が鼻の中で静かに広がっていく感じ。おいしくいただいた。

 最初は約60種だったが、現在の収蔵種数は約280種まで増え、約200種が展示されている。角原さんは「地球上に100万種以上がいるという昆虫、昆虫の種数だけうんこもある。今後も全国でもまれな、虫のうんこの収集保存を続けていきたいです」と意気込む。さらなる目標に向かって、今後も〝ふん〟闘は続く。

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