ロシア侵攻から1年、国際政治学者に聞く「ウクライナの攻勢は秋から」「西側諸国からの武器供給が必要」

深月 ユリア 深月 ユリア
ゼレンスキー大統領(ロイター)
ゼレンスキー大統領(ロイター)

 ロシアのウクライナ侵攻が始まってから24日で1年になるが、依然として先行きは不透明のままだ。ジャーナリストの深月ユリア氏が、ウクライナ出身の国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏に現地の市民感情や今後の展開について見解を聞いた。

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 ロシアがウクライナ侵攻してから1年がたつ。プーチン大統領は撤退するどころか、春に雪が溶けてから追加動員した部隊によるロシア軍の大規模攻勢がかけられるといわれているが、ウクライナ戦争を終戦させられる鍵はあるのか。ウクライナの国際政治学者、アンドリー・グレンコ氏にインタビューした。

 -ウクライナの市民はこの1年をどう振り返っているのか。

 「 『一刻も早く勝利して犠牲を終わらせなければならない』と思っています。ロシアが侵攻してから当初は、『妥協して停戦しなければならない』という考えなど、さまざまな意見に分かれてまいしたが、今は圧倒的多数が『何があっても団結して勝利しなければならない』と思っています。身近な人、大切な家族や友人が戦争で亡くなっているからです」

 -春からの戦況はどのような展開になりそうか?

 「かねて、ウクライナは西側諸国に戦車の供与を懇願していて、ようやくNATO(北大西洋条約機構)の主要国、米・英・独3か国は戦車をウクライナに供与すると決意しました。ただし、供与が決まっても、即戦力になる戦車は一部です。というのも、 西側諸国はこのような大規模な陸上戦を想定していなかったので、第二次世界大戦以降から戦車を倉庫にしまったままにしていました。多くの戦車は、まずは『壊れていないか』、そして『使えるのか』という点検が必要で、点検後に修理して破損して部品を交換してからウクライナに提供する、というプロセスです。そう考えると、多くの戦車がウクライナに提供されるのは早くて夏頃、現実的に考えて秋ではないでしょうか。3月には間に合わないでしょう。ウクライナが夏までに踏ん張れるか、というところです。おそらく、夏までは膠着状態で、秋からにウクライナは反撃に出ます」

 -ウクライナを勝たせるには?

 「すべての自由民主主義国で数量制限をせずに武器の提供をすること。例えば『戦車を何台か提供したら、その分、ミサイルはこういう(例えば、威力が落ちて安価な)種類だけにする』というふうに制限するのではなく、今から持っている戦車を修理をして、戦車を戦える状態にすること。ロシアに勝つために、ウクライナには500両の戦車、数十機の戦闘機と長距離ミサイルが必要です」

 -このような戦争を繰り返さないためにはどうすればよいか?

 「ロシアのような『独裁国家敗北を恐れない』という思考が必要です(※強大な力を持つ独裁国家が戦況不利になった場合に懸念される他地域への影響を恐れないこと)。今でも西側諸国の首脳・政治家・知識人の中に『ロシアが完敗したら危ないから、だらだら戦争を続けた方がいい』という考え方の人たちがいます。『ロシアが完敗したら核兵器を使う』『ロシアはNATOに宣戦する』というふうに恐れているからですが、それは今の状態でもロシアを完敗まで追い詰めた状態でもあまり関係ありません。むしろ、ロシアを完敗させる方が平和が訪れるのです。そして、精神的なハードルを撤廃することで、物理的なハードルもとれる、=(イコール)ウクライナに武器を提供しやすくなると思います」

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