ウクライナの庶民に厭戦気分はない!むしろ結束「ロシアの支配下に入りたくない」識者が母国語る

深月 ユリア 深月 ユリア
ゼレンスキー大統領(ロイター)
ゼレンスキー大統領(ロイター)

 ロシアのウクライナ侵攻が続いている。一方で、ウクライナを守るという大義名分があるとはいえ、西側諸国の中には、武器の〝支援〟に抵抗感を覚える人もいる。ウクライナ国民の中にも本音の部分で「戦争はこりごり」という厭戦(えんせん)気分はないのだろうか。果たして、政治的な交渉によって解決する糸口はないのか。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏に見解を聞いた。

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 ウクライナ戦争が終結しないまま年が明けてしまった。冬は路面が凍結して戦況は膠着状態だが、春にはロシアが軍隊を追加動員するという報道もあり、戦火の拡大が懸念されている。「ウクライナ人は苦しい中でもロシア軍に立ち向かっている」という報道もあるが、実際はどうなのか。筆者はウクライナ人の国際政治学者アンドリー・グレンコ氏に取材した。

 ー住民への攻撃が行われても停電しても、なぜウクライナ人はロシア軍に立ち向かうのか?

 「ウクライナに限らずですが、住民への攻撃は軍の士気をそぐどころか、『戦争犯罪を絶対に許せない』という思いが強くなります。第二次世界大戦中も東京大空襲が何度もあっても日本軍の士気はそがれませんでした。ベトナム戦争でも、むしろ士気が高まり徹底したゲリラ戦となりました。空爆を受けて士気が低下したのはユーゴスラビア紛争でNATOによるユーゴスラビア空爆が行われた時くらいでしょうか。しかし、その時、ユーゴスラビア国民は当時のミロシビッチ大統領の独裁政権がおかしいと気がついて士気を失っていたんです」

 「また、ウクライナにはホロドモール(ソ連がウクライナの農村から農作物を強制徴収して作り出した人為的な飢饉)などロシア民族によるウクライナ人のジェノサイドの歴史がありますので、ウクライナ人はロシアによるジェノサイドの再来を恐れます。だから、ウクライナ人はロシアの支配下に絶対に入りたくないのです」

 そして、ウクライナ戦争が勃発して、1年近くも長期化している原因として、グレンコ氏は「両国の認識の違い」があるという。

 「ウクライナ人の多くはロシアがウクライナと全面戦争をしないと考えていました。戦争するよりグローバル経済で金儲けする方がメリットあり、国が豊かになれば戦争するメリットはない、と考えてました。貧しいロシアは怖いけど豊かになったロシアは怖くないと思っていました。だから、ロシアのウクライナ侵略は寝耳に水だったのです。一方、ロシア人の多くは、ウクライナ人とロシア人が同じ民族でウクライナ人の多くはロシア語が分かるので、『ウクライナ人はロシアの支配下に入っても抵抗しない』、『抵抗するのは一部の過激派のみ』だと考えてウクライナ侵攻を正義の戦争だと考えています」

 「ロシアはソ連崩壊後に経済成長しましたが、エリツィン大統領時代の1993年の冬にバルト三国のラトビアとリトアニアが『ロシアの言うことを聞かないから』とガスの供給を止め、2008年にはジョージアに侵略しています。西側諸国と独裁国家はお互いがお互いの価値観を理解していないんですよね。特に自由民主主義諸国は独裁国家の考え方を全く理解していないんです」

 ー春にウクライナはロシア本土に攻撃をする?

 「『ウクライナは春に向けて大規模攻勢を計画していてロシア国内も攻撃する』というウクライナ国防省の情報機関トップ、ブダノフ情報局長の言葉の拡大解釈です。もともと、ブダノフ氏は非現実的なことを豪語するところがあります。実際に、ウクライナ軍がロシア本土をミサイル攻撃することは不可能で、あるとしてもロシアの攻撃を交わすためにドローンで攻防する程度でしょう」

 ー「米国がウクライナをロシアと戦わせて、ロシアを弱体化させたい」という陰謀論があるが真偽は?

 「それはないでしょう。(米露の)代理戦争だとしたら米国は最初から自ら大量の武器を支援し、ロシアに徹底抗戦させます。しかし、米国はウクライナのゼレンスキー大統領に何度も何度もしつこく頼まれて、何段階にも分けて少しずつ武器を支援しているのです」

 ー今後の戦況はどうなるか。

 「ロシアは春に一部の撤退した兵力を春に再動員するでしょう。20万人の兵ではウクライナに勝てなかったので、増員するのは間違いないでしょう。それまでに、ウクライナが抗戦できるように、引き続き最大限の武器支援が必要になります」

 ウクライナ戦争は3月が山場になるという見方もある。さらに多くの命が失われる前に、西側諸国が多くの武器を支援することでプーチン大統領が「戦争を続けても負ける」と考えウクライナを諦めてくれると良いのだが。

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