コンビニエンスストアではレジ袋の有料化など、近年になって従来のスタイルから変容しつつあるが、さらに、その在り方を見直した「未来のコンビニ」が都内に誕生した。流通アナリストの渡辺広明氏と1月に同行取材した現場で「食品ロス対策」などの取り組みを探った。
昭和から平成にかけ、コンビニで弁当や総菜、生菓子などを買うと、割り箸、プラスチック製のスプーンやフォークが当然のように提供されてきた。だが、環境問題に配慮し、2020年(令和2年)にレジ袋が有料化されたことにリンクして、こうした「カトラリー類」(食事の道具)を客側が求めない限り、無条件で提供されることはなくなっている。
昨年11月下旬に都内で1号店としてオープンした「グリーンローソン北大塚一丁目店」を訪れた。入口には、今年1月9日をもって「プラスチックごみ削減のため、お客様用使い捨てお箸、スプーン、フォーク、ストローの配布を終了しました。マイ箸・マイスプーン等の使用へのご協力をお願い致します」と告知する貼り紙が。「マイ箸」や「マイスプーン」を持ち合わせていない人のため、店内には木製スプーンやフォーク類の販売コーナーもあった。
渡辺氏は「これまでの真逆をいってるんですよ。便利だから使い捨て…という考え方から脱却しないと難しい時代になっている。家にはコンビニでもらった未使用のスプーンやフォークが使わずに置いてあることもあるでしょう。それって無駄だよねということです」と解説する。
食品本体の見直しも進む。「冷凍弁当」と「スマートフォンで注文を受けてからの調理」だ。いずれも、売れ残った弁当などを廃棄する「食品ロス」をいかになくすかの試みとなる。カチンカチンに凍った弁当の賞味期限は7月だった。渡辺氏は「弁当工場で作って氷らせている。賞味期限が『240日間』と、かなり先に設定しているので、新たに入荷することもなく、食品ロスがない。また、解凍して売ることもできる」と解説した。
さらに、スマホで注文を受けてから店内の厨房(ちゅうぼう)で調理し、指定時間に温かい弁当を受け取りに来てもらう行程も確立。渡辺氏は「注文だけして来ない人がいても、スマホで先に決済されているので店側に損失はない。また、取りに行くのが遅れた時は、また温め直してくれるといった温かい人間対応も臨機応変にあるのでは」と補足した。
また、渡辺氏は冷たい飲料や食品コーナーに付いた扉を指さした。従来のコンビニでは、ペットボトル飲料売場には基本的に扉が付いていたが、サラダ、サンドイッチ、パック飲料などが陳列されているオープンケース売場には扉がなかった。そこに扉が付いたことが新たな試みとなる。同氏は「CO2削減です。扉を付けると一気に電気代も下がる」と説明した。
店内ではリサイクル活動も実施。来店客が持参した食品や古着を入れる箱があり、回収後、施設などを通して必要とされる人に届けられる。また、有名百貨店などの手提げ紙袋をランダムに入れた段ボール箱も。不要になった紙袋を寄付してもらい、店内で袋が必要になった客に求められれば提供している。
対照的に、非デジタルの象徴である「紙媒体」商品のうち、新聞コーナーは存在した。渡辺氏は「基本的に新聞は売れていないのですが、一部には毎日買いに来る固定客がいるので、これは外せなかったらしいです。他の商品もついでに買っていくから、週に1度くらいの雑誌よりも新聞の方が店舗的には重要なんですよ。一方、本や雑誌はない。こういう店が未来のコンビニなると思います」と付け加えた。
1号店の立地条件にも注目した。店舗のある大塚はJR山手線で池袋駅の1駅北に位置する街。駅前には再開発で誕生した商業施設などがあるが、マンションなどの住宅が多く、繁華街とまではいえない街だ。駅から徒歩5分ほどの同店前には都営アパートがそびえ、斜め前には警察署。来店客は生活圏の人と考えられ、繁華街のように不特定多数の人が流れてくる可能性は低い。
渡辺氏は「なぜ『大塚』なのかと言うと、まずはここがフランチャイズ店で、新しい実験にオーナーが乗ってくれたということ。また、池袋や新宿、渋谷などで売り上げ的に成功したとしても、それは東京の繁華街だからであって、そうではない場所では分からない。全国に広げたいので、地方都市でも通用するかどうかを考えると、ちょうど大塚くらいの規模の街がいいということになる」と解説した。
手ぶらで食べ物を買っても箸やスプーン、フォークが頼まなくても付いてきて、袋に入れてくれるという、当たり前のように享受してきたコンビニ文化から脱却する時代が既に来ている。模索する中で、今後、さらに課題点は出てくるだろう。渡辺氏は「課題点は出てきた方がいい。課題がなければ進化もない。この店舗は最終形ではなくて途中形。未来のコンビニをここで実験している」と総括した。