お笑い芸人によるプロレス団体「西口プロレス」のアントニオ小猪木(51)が昨年末、静岡県内で児童養護施設の子どもたちとプロレスを通して交流を深めた。恩師である〝燃える闘魂〟アントニオ猪木さん(享年79)亡き後に迎えた新年、小猪木は、よろずニュースの取材に対し、コロナ禍の中でも子どもたちと触れ合った「プロレスごっこ」について持論を語った。
イベントは会員制オンラインゼミを開催する会社「NIHONDO」(東京都)の企画で、昨年12月29日に静岡県の旧伊東市立川奈小学校体育館で「クリスマスプロレス」と銘打ち、西口プロレスと女子プロレス団体「SEAdLINNNG(シードリング)」の提供試合が行われた。
小猪木は西口プロレスヘビー級王者として、挑戦者・蛾野正洋を相手に3度目のタイトル防衛戦に臨み、延髄斬りからの体固めで勝利して王座防衛に成功。女子の2試合には中島安里紗、海樹リコ、アマゾン、松本浩代が出場した。小猪木は「会場となった小学校は2年前くらいに廃校になったそうです。山があり、丘になっているところで太平洋の海も見える学校でとてものどかな場所にありました」という。
当日の様子について、小猪木は「子どもたちが会場入りする我々を待って歓迎してくれたのがうれしくて、早速、小学生たちと校庭や裏庭で遊びました。高校生たちは受験前にも関わらずリング作りを手伝ってくれました。中には外国人の男の子もいました。地元の沼津プロレス代表の協力もいただきました。各試合が盛り上がり、一体感のある会場となりました。プロレス世代ではない子どもたちですが、先生方は技をやる勇気、受ける勇気、そして苦しくても耐える勇気を、女子プロレスを観戦しながら教えていました。試合終了後、小さな男の子たちは小猪木と蛾野とのプロレスごっこでぶつかり合いを楽しみ、女子中学生たちは女子プロレスラーとのトークで交流しました。子どもたちからは笑顔と大きなお礼を言ってもらえました!」と報告した。
この「ぶつかり合い」については、20年以来、コロナ禍で制約されてきた行動だけに、子どもたちの目も輝いていたという。小猪木は「コロナ禍というのは置いておいて、本来、子どもたちはもっとたくさん体を使って遊ぶべきなんです。相撲ごっこ、プロレスごっこ、怪獣ごっこ…。そうして皮膚感覚を養い、痛みを知る。痛みを知ることによって相手への配慮もできる。やり過ぎたら謝る。謝られたら許す。遊びやスポーツは終わったらノーサイドにする…というルールも全て勉強です」と持論を語った。
さらに、小猪木は「学校では『プロレスごっこをしてはいけません』と教えられてきましたが、確かにケガをしやすいプロレスごっこは危険です。しかし、自分はプロレスごっこ、相撲ごっこ、怪獣ごっこをやるべきと思いました。もちろん、相手を傷付けるケンカではなく、あくまでも〝ごっこ〟です。そうすることによって、お互いに『これ以上やったら痛い、これ以上やったら危険、これ以上やったらケガをする』というものを体で自然と学習します。そうして『人の痛み』を覚えていけるのです。遊びやゲーム、スポーツにルールがあるように、『謝ること』と『許すこと』の社会としてのルールも学んでいけるのです」と付け加えた。
猪木さん亡き後に迎えた初めての年。小猪木は「時に人との触れ合いに『遠慮が一番の失礼』ということもあります。お笑いでもプロレスでも人との触れ合いや挨拶も同じことが言えるような気もします。今回も率先して子どもたちと触れ合ってきました。猪木さんもよくインタビューで『相手の懐に飛び込む勇気』と語っておりました」と恩師への思いを込めた。