ランドセル症候群が深刻 9割以上が「重い」と調査報告、「革製文化」に対し、メーカーは軽量バッグ開発

北村 泰介 北村 泰介
色は男子が黒、女子が赤。デザインや大きさも従来のランドセルのように見えるが、実は軽量化された通学バッグ「ラクサックジュニア プラス」。旧来の「革製文化」から移行しやすいタイプだ
色は男子が黒、女子が赤。デザインや大きさも従来のランドセルのように見えるが、実は軽量化された通学バッグ「ラクサックジュニア プラス」。旧来の「革製文化」から移行しやすいタイプだ

 小学生の「通学ブルー」が深刻だ。9割以上がランドセルを重たいと感じ、3・5人に1人が通学時に身体の痛みを訴えた経験があるという調査結果が、学校用水着開発の大手「フットマーク」(本社・東京)から発表された。身体的な負担に加え、通学時にストレスを感じる「ランドセル症候群」が懸念されている中、その現状や対策について、同社の担当者や専門家の見解をまとめた。

 調査対象は通学でランドセルを背負う小学1-3年生と保護者1200組。その結果、以下の4項目が明らかになった。

 (1)小学生の93・2%が「ランドセルが重い」、保護者の89・5%も「ランドセルが重すぎるのでは」と感じている。ランドセルの平均重量は4・28キロで、昨年度の3・97キロより増加。3キロ以上のランドセルを背負っている子どもは68・9%で昨年の65・8%より増加。

 (2)ランドセルが重いと感じている小学生のうち、3人に1人が通学を嫌がった経験があり、3・5人に1人が通学時に肩や腰・背中など身体の痛みを訴えたことがある。

 (3)学校に教科書や教材を置いて登下校する「置き勉」が禁止されている小学生は41・7%で、前年度の46・8%に比べ、やや減少したものの、依然として半数近くが置き勉禁止。また、小学生の90・2%がランドセル以外に体操着などを入れる別のカバンを併用。

 (4)子どもの体への負担が軽減されるカバンがあれば買い替えを検討する意向がある親は64・5%と、前回51・0%から大幅に増加。革製以外のランドセルの存在も41・8%の親が認知。

 ランドセルの重さと子どもへの影響を研究している大正大学の白土健教授は「2020年度からスタートした新学習指導要領により、ICT教育が推進され、電子端末の支給が始まりました。それに伴い、ランドセルの中身は教科書に加え、タブレットの併用で重さが増したと考えられます。加えてコロナ禍の影響から水筒の持参、衛生観念の徹底により、副教材や上履きなども持ち帰りが必要とされる実態もあります」と説明した。

 メーカーとしては、どう対処しているのか。同社の担当者に聞いた。

 -従来の革製ランドセルは簡単に変えられないという現状は根強いのか。

 「私どもでは、革製・合皮のランドセルを使用することは義務ではなく、素材は問わないという認識です。ただ、背景には従来の革製・合皮のランドセルが、日本で長年使用され続けており、『小学生=革製のランドセル』であるという文化が強く根付いていることがあると思われます。また、軽い素材のバッグを選ぼうにも、回りと違うことを心配される親御さんもいて手を出しにくい、という課題もあります。2年前に『ラクサックジュニア』という商品を発売した際、検討されていたお客様からよくいただいた声が『このリュックを学校で使用したいけど、友だちとデザインが違うので抵抗があります』でした。そんな声を今回の新商品『ラクサックジュニア プラス』には反映させました。フタの素材に合皮を採用したのは、見た目のデザインをランドセルに寄せたかったからです。まずは、最初の見た目のハードルを下げた事で、重さを感じにくい『ラクサック』をもっと多くの方が受け入れていただけるのではないかと考えています」

 -ランドセル自由化を進める学校や地域から問い合わせは?

 「ランドセルは基本的に個人の自由購入品であると認識しております。そのため小学校から斡旋される事はないですし、現状、お問い合せもありません。新1年生にリュックの無償提供を考えている自冶体の教育委員会から、お問合せはありました」

  -今後に向けて。

  「子供たちの身体的、精神的負担を減らしてあげたいです。軽くて、経済的にも優しいポリエステル製のランドセルが選択肢で広がっていると感じます。1年生で購入したランドセルですが、サイズや色の好み、体格の変化を考えると成長に応じて買い替えていただくことを提案しています。革製のランドセル以外にもお子さん、親御さんの選択肢を増やしてあげるのが、弊社の役割と思っています。今後はSDGsの一環として、再生ポリエステル素材を取り入れるなど環境に配慮した『ラクサック』を開発したいと思っています」

 7割以上の小学生がナイロン素材の軽い通学カバンを使っていることで知られる北海道小樽市をはじめ、京都、長野、岐阜、埼玉、茨城の一部地域でも軽量カバンの使用例がある。まずは体が第一。革製ランドセルという「伝統」や「文化」も認めつつ、必要な子どもたちは軽量カバンも選択できるという、合理的かつ多様性の容認こそが「通学ブルー」解消の一助になるだろう。

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