来年3月で還暦の野沢直子、夢は「面白いおばあちゃん」新刊で描く「第3の人生」とは「貯金ゼロ」も告白

北村 泰介 北村 泰介
〝渡米芸人〟の先駆者として唯一無二の存在となった野沢直子。還暦を前に自身の老いと向き合う
〝渡米芸人〟の先駆者として唯一無二の存在となった野沢直子。還暦を前に自身の老いと向き合う

 1991年に単身渡米し、約30年間に渡って独自のスタンスで活動するタレントの野沢直子(59)が来年3月で還暦を迎えることを踏まえたエッセー「老いてきたけど、まぁ~いっか。」(ダイヤモンド社)を刊行した。野沢がよろず~ニュースの取材に対し、自身の老いに向き合う日々や今後の生き方について語った。

 遠い先にあると思っていた「還暦」が迫ってきた。60代を前に思うことがある。

 「自分が老いてきたというのは日々、感じていまして、コロナ禍ということもあって、へこんでいたんですけど、落ち込んでいても仕方がない、自分を励まそうという感じで書き始めました。お互いに年を取っていくけど、楽しい老後を過ごしましょう、という感じですね」

 小説「半月の夜」(KADOKAWA)もエッセーと同じ10月に出版。フィクションとはいえ、こちらも老いと向き合う50代女性の再出発というテーマで共通する。

 1980年代に日本のテレビ界でブレーク。その象徴的な番組はフジテレビ系の深夜バラエティー「夢で逢えたら」だった。野沢は、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコと共に次代を担うお笑い芸人4組の中に入っていたが、人気絶頂時の91年に同番組を降板して渡米。米国在住31年となる。果たして、渡米して良かったのか、逆にもし、あのまま日本にいたら、どのような「今」になっていたのか。

 「結果から言うと、(米国に)行って良かったなと思っています。テレビの世界のことだけで考えると、ずっと日本にいて長くお仕事していたら…と考えなくはないですけど、人間として、テレビ局以外の世界でやってきたことがある。例えば、バンド活動やショートフィルム製作と上映など、いろんなことをしてきたので。アメリカですごく成功したというわけでは決してないですけど、いろんな人とのつながりとか、いろんな景色を見たなと思うと、思い切って(日本を)出て良かったと思うことの方が大きいですね」

 〝渡米芸人〟の先駆者として唯一無二の存在になった。「テレビの仕事をたくさんしていた時に、自分は面白くないとか、ダメだとか、へこんでいた時期があって、どこかで修行とか勉強したいと思っていた時にドラマを見ると、よく(登場人物が)ニューヨークに行ってたので…という理由だけです。それで(米国人男性と)結婚して家庭ができ、子どもたちがみんなアメリカ人なので定着したというのもあります」

 長女の真珠・野沢オークライヤー(29)は総合格闘家として活躍中。「試合を見るのは怖いですけど、頑張っているので、長く続けて欲しいです。次女と長男は好きな仕事におかげさまで就けて頑張っているのでありがたいなと」。そう語る野沢は母の顔になっていた。「子どもたちは離れていくものだし、自分たちの家庭を持ったらそっちの方が大事になるので邪魔したくないし、依存もしたくない。『死ぬ時は1人だよな』とエッセーを書きながらすごく思いました」。自身も含め、これからのシニア世代の生き方についても考える。

 「60歳まで生きて、残りが10年ということではなく、普通に考えて20年、30年、もしかすると40年くらいある人もいると思うので、それを考えると人生長いですよね。例えば、今までのパートナーの人と離れて別の新しいパートナーを探すこともありだと思うし、結婚後が第2の人生だとしたら、次にもう一つ、第3の人生くらいの感覚で新しい相手と一緒にいたいという人も増えると思うんですね。老いてから、新しいことを始めてもいいんじゃないかなと思います」

 今後、なりたい自分は「面白いおばあちゃん」だという。「SNS上でも、役者さんとして演じる感じでも、『面白いおばあちゃん』としてブレークしたい(笑)。書くことも好きですし、バンドやショートフィルムも続けていくつもりです。そういうことは引退とか関係ないので、体力が続く限り、やっていきたい」

 「貯金ゼロ」という告白もネットで話題になった。

 「そんなに驚かれるとは思ってなくて、驚かれることに驚いています。日本だと、ちょっと前に『老後は2000万円くらい持ってないと…』みたいなことがはやったということを最近知ったんですけど、本当にゼロ、全然ないです(笑)。お金は必要最低限、生活できる分だけあれぱと思っています。今は元気ですけど、体が動かなくなった時には施設に入れてくれと、子どもにはフワッと言ってるんですけど、その時のお金はどうするんだという話になると、私はフワッと『どうにかなるだろう』と思っていて、これからちょっと貯金しようとは思っているんですけど、今のところはゼロです!」

 トレードマークとなったオレンジ色の髪で屈託なく笑った。

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