キングクリムゾン、ELPだけじゃない 同人プログレの〝布教〟に尽力する男がいる

山本 鋼平 山本 鋼平
自著を手にする霜月便りさん=都内
自著を手にする霜月便りさん=都内

 多彩な音楽ジャンル、ボイスドラマ、声優、ゲームなど音系に特化した同人即売会「M3」が30日、都内で開催された。同人プログレッシブ・ロック(同人プログレ)の委託CD、そのディスクレビューを頒布する活動を続ける霜月便りさんに話を聞いた。

 霜月便りさんは楽曲制作を行うわけではない。自らがチョイスした同人プログレCDを持ち込み、ディスクレビューとともに頒布する。その審美眼を評価し、オススメの作品を選んでもらおうと、霜月便りさんに会うために訪れるファンもいるという。「コロナ前ほどの人はまだ戻っていませんが、イベントは出会いもあるし楽しいですね。反応や感触を直接聞けるのもいいところです」と語った。30冊を超える出版物、100品を超えるCDとLPを準備。同人プログレといっても東方アレンジ、ボーカロイド、オリジナルと多彩で、曲調も幅広い。

 霜月便りさんは岩手在住、建築関係の仕事に就く。中学生でプログレに目覚め、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)のアルバム「タルカス」を愛聴した。イラストが得意で、2013年にプログレ名盤のパロディなどのイラスト集などを製作したが、反響は芳しくなかった。2015年春のM3から同人プログレに特化し、委託CD、ディスクレビューの頒布を開始。「例えばキングクリムゾンなどなら既にレビュー本がたくさんあります。でも、同人プログレのレビューをやっている人は誰もいない。一緒にCDを置くと、反響が良かったんです」と語った。ブログ、ツイッターでもレビューを展開するが、イベント会場での反響は段違いだった。その活動を真似る者は、まだ出現していないという。

 岩手の自宅で段ボール6箱分の作品を保管する。「イベントごとに首都圏に出てくるのは大変です。地元でイベントができるように盛り上げていきたい」と誓った。

 M3は1998年に始まり、主に春と秋の年2回開催を継続する。同人音楽はSNSや動画配信サイト等のネット上で、品物の頒布から感想のやり取りまで完結する側面があるが、M3準備会事務局代表の相川宏達さんは「確かにオンラインだけでもできますが、イベントとして実際に交流する機会は大事だと思います。コロナ禍でイベントが開催されなかったときは、例えば同人誌では通販で売られる作品数が減りました。交流する場を設けることは、作り手と受け手も含めて、創作活動全体を盛り上げることにつながると思います」と、活動の意義を語った。今回のM3にはリアルイベントには1255サークル、ウェブイベントには562サークルが参加。一般来場者は6500人程だった。

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