全国旅行支援 「割引」は旅行後まで分からぬケースも!? 予約時に割引確約できない中小業者の実情とは

ぽすわんのカノー ぽすわんのカノー

全国旅行支援が10月11日から始まった。旅行代金の40%(条件により上限5千円〜8千円)が補助される上に、加盟店で使える1千円〜3千円のクーポンがされる非常にお得な制度だ。好評のようで、既に募集を中止した自治体もある。コロナ禍による打撃から観光業界を救済すべく始まったこの施策だが、実は大手の旅行代理店中小の旅行代理店では行政から受けられる"恩恵"が大きく異なっているのをご存じだろうか?

「開始のわずか4日前の10月7日金曜日に中小の代理店向けの説明があったんですが、酷い内容でした」

そう語るのは、兵庫県内の旅行代理店に勤務するUさん。

Uさんによると、旅行の予約を受け付けた時点では補助の可否が分からず、旅行後に代理店から各都道府県の窓口へ届ける必要があるようだ。つまり、旅行者は仮に1カ月先の旅行を予約しても当日旅行中に「財源が無くなったので割引できません」と言われる可能性があるとのこと。

10月14日時点での中小旅行代理店における全国旅行支援適用の流れはこうだ。

企画された旅行のプランを、代理店が全国統一の窓口に利用登録。その後、旅行者がそのプランを注文し、旅行当日、ワクチン接種の証明など所定の必要書類を持参する。旅行後、15日と末日に代理店がまとめて申請し、許可が降り次第、後日補助額が返金される。

「説明会では、他の県を例に挙げてすぐに終わる自治体もあると説明されました。兵庫県は『予算も潤沢ですぐに中止になることはないと思うので多分心配しなくて大丈夫です』と言われましたが、旅行が終わらないと割引になるか分からないなら代理店としてもどう募集すればいいか分からないです。5千円〜8千円返ってくる“かも”? なんて募集の仕方をしたとして、一体誰が安心して旅行できるでしょうか」(Uさん)

また、Uさんの代理店とバスツアーを計画していたKさん(50代飲食店経営女性)も頭を抱えている。

「Uさんと話をして、11月末ごろからのバスツアーを企画しています。全国旅行支援が適用されるように内容もほぼ固め、10月1日に日程と概要を発表しました。その後に旅行代理店から『旅行後まで補助されるか分からない』と言われて非常にショックでした。『旅行が終わるまで補助されるか分からないけどいかがですか?』だなんて旅行者に言えませんよね。関係各所に『もしかしたら中止になるかもしれない』と説明をしたり大変な状況です。

そもそも、旅行後まで補助ができるか分からないのであれば、どうお客様からお金を受け取ればいいんでしょう?旅行当日に旅行者がもらえる1千円〜3千円のクーポンを使った後にキャンペーンが終了したら、その金額を追加で徴収されるのでしょうか?予約時に補助が確定しないなんて企画として破綻してます。こんなの"割引されるかもキャンペーン"ですよ」

Uさんの代理店は兵庫県の窓口に問い合わせたが、1時間半のコールの末ようやく繋がった担当者は、都道府県ごとの補助額の上限の存在すら知らず、長い保留の末に『分かりません』と言われたという。「先に契約を締結していても、予算が終了したら割引を適用できないのですか?」という質問に対しても「分からないので全国統一窓口(代理店のみが問い合わせできる窓口)に聞いてください」と言われたそうだ。

施策の要である割引方法が分からない問い合わせ先になんの意味があるのだろうか。

兵庫県の観光振興課に確認したところ、「そんな指示をするわけがない。これまで同様予約時点で割引ができると説明したはずだ」ということ。しかしUさん以外の中小代理店に聞いても、みな報告まで割引の確約は取れないという認識だった。

「兵庫県は予約時点で割引ができると説明をした?いやいや、予約時点で割引ができるはずがないです。旅行を受け付けた時点で報告する方法の説明を受けていません。売り上げの予測などは提出をしますが、旅行が終わるまで兵庫県は個別の予約状況が分からないはずです」(代理店A社員)

「今回は恐らくGo To トラベルなどの予算を使い切るための事業なのだと思います。予算超過をおそれてあえてこのようにしているのだと思いますが、その調整を中小の代理店や旅行者に負担させるのはおかしいと思います。早急に、大手代理店と同様に予約時に割引して欲しい」(代理店B社員)

賛否はあるが旅行で経済を回そうという試みは一定の意義があると思う。ただ小規模業者が差別的な対応をされるのはどう考えてもおかしい。

Kさんは最後にこう語った。

「こうしている間にも、大手の代理店はどんどん兵庫県への旅行の割引予約を受け付けている。お客さまには『どうして他はできているのに、このツアーは割引が出来ないんですか? 旅行代理店に騙されてるんじゃないですか?』とまで言われています」

かくいう筆者も兵庫県民。愛する兵庫県を訪れる旅行者にまで不安を与え、本末転倒になりかねない現状を速やかに改善してほしい。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース