ウクライナ侵攻や台湾有事など世界的な緊張が続く中、日本周辺の海の安全が脅かされている。9月1日から7日、ロシア軍は日本海やオホーツク海など極東海域で大規模な軍事演習「ボストーク2022」を行い、中国軍も参加した。
両軍は海上通信・海上経済活動エリアの防衛や沿岸地域の地上部隊の行動に協力する演習を行い、北海道の日本海では、ロシア海軍のフリゲート艦3隻と中国海軍のミサイル駆逐艦など3隻が航行しているのが発見され、同6隻の艦隊は周辺海域で機関銃の射撃演習などを行った。
中露が共同で訓練を実施するのはこれが初めてではない。昨年10月には、両海軍の艦艇が北海道の奥尻島南西の日本海で一緒に航行しているのが確認され、その後、両軍は津軽海峡から太平洋へ抜け、千葉県犬吠埼、伊豆諸島、高知県足摺岬沖と南下し、九州南部の大隅海峡を通過し東シナ海に入って分かれた。
また、同月には、極東ウラジオストク沖で4日間の日程で戦闘機による射撃や潜水艦による探査などの合同演習が行われた。2020年12月には、中露の戦略爆撃機計6機が日本海と東シナ海の上空を共に飛行し、航空自衛隊と韓国軍の戦闘機がそれぞれ緊急発信する事態もあった。
ウクライナ侵攻により、日本とロシアの関係はこれまでで最も冷え込んでいる。それにより、ロシアは日本に対して経済的な制裁だけでなく、日本周辺で軍事活動を活発化させ、日本を強くけん制するようになった。北方領土の国後島でも軍事演習が行われたとみられ、北方領土に近い根室などでは国後島から火の気、赤い光が見えたとされる。日本は長年北方領土4島の返還を目指してきたが、それはこれまでで最もハードルが高くなってしまった。プーチン大統領には、北方領土を軍事拠点化し、それによって周辺海域、太平洋でプレゼンスを強化したい狙いがある。
また、台湾問題の緊張により、日中関係も今後明るい兆しが見えないでいる。中国もロシア同様、米国と強く対立しており、台湾を巡る日本の姿勢も良く思っていない。要は、中国にとってロシアにとっても互いに関係を強化することにはメリットがあり、日本が米国の軍事同盟国ということも関係し、今後ますます日本周辺で中露両軍による軍事演習を活発化させてくるであろう。