国内で活動する3人の現役銭湯絵師のなかで、最高齢の丸山清人さん(87)の作品展が東京・国立市のギャラリービブリオで開催されている。B4の小品から畳大のサイズまで36点が展示され、35点が新作。大衆浴場の壁面のような、さまざまな富士山の絵がそろった。
富士山と松、海、青空に白い雲。慣れ親しんだモチーフだけでなく、作品展では夕日に染まる富士山、紅葉に彩られた富士山、桜と富士山、縦構図のものなど、銭湯絵では見かけない作品も並ぶ。映画「テルマエロマエ」で作品が採用されたことでも知られる丸山さんは、「富士山を描き続けていると、たまには違うものも描きたくなるんだよ」と笑った。夕日は日が落ちる、紅葉は葉が散る、という理由で銭湯絵では厳禁。同様に猿、温まる場所という理由で雪化粧の富士山も忌避される。
赤、青、黄、白の油性ペンキで色をつくる。群青も使用されていたが、生産中止になった。展示作品は販売され、樹脂板に描かれているため、自宅の浴室に飾ることも可能。同じ富士山でも表情はそれぞれ。丸山さんは「山頂の雪のバランスが最も難しい。『松は10年、富士山は一生』という言葉があるように、満点をつけられる富士山はありませんよ」と語った。
丸山さんは1935年生まれ、東京・杉並区出身。18歳で銭湯の広告を扱う背景広告社に入社。45歳で独立した。師匠の叔父、故・丸山喜久男さんを尊敬し「叔父は早くてうまくて、特に松は天下一品だった。全然追いつけていないが、この気持ちがあるからこそ描き続けることができる」と前を向いた。
今年で7回目の個展。過去にはライブペインティング、ペンキ絵のワークショップを行ってきたが、今年はコロナ禍のため自粛。丸山さんは「次の機会にはできたらいいな。元気なうちは毎年、個展を続けていきたい」と語った。
同展は10月11日まで、入場無料。開館時間、休館日などは同ギャラリーの公式サイトまで。