時代を超えたヒット曲「ダンシング・ヒーロー」で知られる歌手・荻野目洋子(53)が9月から自身のライフワークとする「虫」をテーマにした新番組を始めた。題して「荻野目洋子の虫はともだち」(毎週土曜午後1時放送)。全国のJ:COMエリアで視聴可能な無料チャンネル「J:テレ」で放送されている。荻野目がよろずニュースの取材に対し、虫や番組にかける思いを明かした。
荻野目は昨年加入した「1933ウクレレオールスターズ」が8月に横浜で開催したコンサートで番組を告知した際、「私は子どもの時から虫がとても好きです。自然の中で育ったので」と語った。
自然に囲まれた千葉育ち。10代から本格的に芸能活動を始めたが、虫との触れ合いや昆虫図鑑などで学ぶ時間を大切にしてきた。その思いはNHK「みんなのうた」で2020年に放送された「虫のつぶやき」にも表われている。自身の作詞作曲で、ウクレレを演奏しながら、カマキリやクモ、ガ、コノハムシ、タマムシ、ゲジゲジといった、外見から人間には好かれないタイプかもしれないが、懸命に生きる虫たちの心情を詞に込めた。高校時代に同学年だったプロテニス選手の辻野隆三氏(現指導者、解説者)と結婚し、3人の娘を育てる中でウクレレに魅了されて演奏するようになり、虫好きという部分とマッチして生まれた曲だ。
新番組の第1回では、鳥取県湯梨浜(ゆりはま)町で地元の専門家や小学生らと、水田やため池などの水中に生息するカメムシの仲間である「コオイムシ」を紹介。その名は、オスがメスによって背中に産み付けられた卵を背負って育てることから「子追い虫」と呼ばれたことに由来する。
荻野目も実際に水田に入って〝昆虫界のイクメン〟とも称されるコオイムシと触れ合い、「子どもをお父さんが乗せている時に『家族の輪』という感じがして。私自身も子育てをしてきて、親近感を持った」と実人生に重ねた。最後に、卵を背負ったコオイムシの絵を描き上げ、隣で一緒に絵を描いた小学2年男子は思わず「リアル!」と歓声を上げた。
「命の大切さとか、虫から人間の生き方を学ぶという感じでやらせていただきます。(鳥取ロケでは)大自然の中で虫取りをした子どもの頃を思い出しました」。ライブのMCでそう語っていた荻野目に、後日、改めて虫への思いを聞いた。
-虫に興味を持たれた時期、その触れ合い方は。
「幼稚園〜小学校3年くらいです。家にあまりおもちゃがなかったので、代わりに図鑑や辞典を読むのが好きでした。もちろん外遊びもするのですが、何かを調べる行為が好きだったのだと思います。研究っぽい感じがして。そのフィールドにどんな虫がいて、どんな風に生きているのかを知るとか、虫のアート的な色合いだったり、美しいものもいれば、枯れ葉のようなデザインで擬態する虫がいたりするのも不思議で興味が沸きました。学校の図書室で借りた一冊の昆虫の生態に関する本も、メスとオスの形態の違いには意味があったり、卵を産んだらすぐ死んでしまう種がいたり、持って生まれた宿命があるんだなぁと、小さなその生き物に強烈に惹(ひ)かれたのかもしれません」
-虫から学んだことは。
「成虫でいられる時間が短いので、尊さを感じます。あんなに長く準備してきたのに、やっと羽ばたけたと思ったら季節とともに息絶えてしまう。子孫は残しながら。長く続いてきた種の性質だから誰も責めることなく、恨んでいるようにも見えない。そこが美しいなぁって。人間は状況が悪くなると誰かに責任転嫁したり、環境を悪くしていったり、生きるためじゃなくて個人のエゴで人を傷付けてしまったり…。虫を下にみる人が多いですが、シンプルで崇高な生き方をしているのは虫の方だと思っています」
-番組から発信したいことは?
「まだ始まったばかりなので手探り状態ではありますが、まずロケ先の皆さんがとても協力的だったのがありがたかったです。虫を取り扱うということは美しい自然を背景にしますから、作るわけにはいかないんです。ありのままの風景が美しい場所、そして、そこに住む虫を捕まえることがメインではなく、生き方を知る。子供さんにも自分の言葉で答えてもらう。一緒に考える番組にしていきたいですね。絵も描きますから観察力も必要です。虫好きな子はみんなそれができるんです。普段からよく見ているし、誰かが言ったからじゃなくて、自分だけの好きな部分を持っているから。素晴らしいことだなって思います。基本的にはユルい雰囲気なので(笑)、大人も子供も見た人が出演したくなるような親近感のある番組にしていけたらと思っています!」
番組の第2回も湯梨浜町が舞台となり、17日の初回放送ではチョウの一種「シルビアシジミ」を紹介する(再放送24日)。荻野目の「虫から学ぶ旅」が始まった。