違法切り抜き動画を駆逐する!アニメ「邪神ちゃん」新対策は1話を約100分割して公式から公開

松田 和城 松田 和城
アニメ第3話放送前に公開された公式切り抜き動画「【違法より早い】邪神ちゃん3話初音ミク登場シーン」
アニメ第3話放送前に公開された公式切り抜き動画「【違法より早い】邪神ちゃん3話初音ミク登場シーン」

 動画サイトにはびこる違法切り抜き動画に対抗して、最新話放送前に動画を投稿する新しい取り組みで話題を呼んでいるアニメ「邪神ちゃんドロップキックX」(邪神ちゃん)の製作委員会が今後、さらなる対策として放送中の第3期1話を約100本に分割し、公式ユーチューブチャンネルで配信することが21日、分かった。

 よろず~ニュースの取材に応じた「邪神ちゃん」宣伝プロデューサー・柳瀬一樹氏は、「3期の1話を約100分割して全部アップロードしようと考えています。全部アップロードしてしまったら、もう違法でアップロードする理由はないと思うんです」と説明。動画は近日公開予定だという。「これがうまくいったら次はTikTokやニコニコ動画にも展開していきたい」と意欲を燃やした。

 7月にテレビ東京などで放送を開始した「邪神ちゃん」3期は放送前から、人気バーチャルシンガー・初音ミクが作中に登場すると発表され、注目を集めていた。柳瀬氏によると、第1話放送後から、初音ミクの登場シーンを中心に違法アップロードの切り抜き動画が多数投稿され、550万回以上再生されたものも確認したという。対抗して違法動画と同じ切り抜き動画を制作し、第1話、2話放送後にアップしたが再生数で〝敗北〟。悔しい思いから公式にしかできない秘策を考えた。「テレビの放送よりも先に切り抜き動画をアップロードすればさすがにこれは負けないだろうと」。第3話放送前日の18日、「【違法よりも早い】邪神ちゃん3話初音ミク登場シーン」を投稿。現在、公式の切り抜き動画を超える再生数の動画は確認しておらず、念願の〝初勝利〟を果たした。

 違法動画の削除申請のハードルは、アニメによって異なる。大手出版社、アニメ会社は自動識別システム「コンテンツID」を導入しているケースが多く、違法動画がアップロードされても自動的にAIが削除する仕組みが確立しているという。一方で、柳瀬氏は「『邪神ちゃん』のような中堅以下の会社のアニメではそれを持っていないんです。なのでコストをかけて対応していくよりほかない」と苦悩を吐露。コストが還元される保証はないため「とても対処に困る大きな問題」と語った。そこで、削除ではなく、グーグルに公式動画を本物と認識させようと〝フライング公開〟を実施した。「誰よりも早くグーグルのアルゴリズムに『ここが本物』っていうことを教えることができて、それがかなり問題の解決に役に立つということが分かった」と手応えを語った。

 アニメは3期まで続編が放送された場合、新規ファンの獲得が決して簡単ではない。「邪神ちゃん」は放送前に比べ、ユーチューブの登録者数は13.7万人へとほぼ倍増。ツイッターのフォロワー数も1万7000人増の6万3000人超。初音ミクが登場する切り抜き動画をきっかけに、公式チャンネルの関連動画を目にする人が多く、動画「邪神ちゃん、左右にちぎれる!」は21日までで121万回以上再生されている。

 〝けがの功名〟で大きな話題を呼んだことに加え、柳瀬氏は「『邪神ちゃん』3期自体のおもしろさもファン増加の一因」と自信も見せる。23分39秒の3期第1話を、約100分割する新たな試みに期待が高まる。柳瀬氏は「違法アップロードからノウハウを学び、ファンの方のアドバイスや翻訳を活用し、たくさんの方にオフィシャルコンテンツをお届けしていきたいと考えています」と話した。違法動画駆逐への試行錯誤を続けていく。

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