「夜回り先生に襲われた」発言の参政党・河西氏を水谷修氏が名誉毀損で提訴「子どもたちの心に動揺」 

北村 泰介 北村 泰介
参政党の河西泉緒氏を名誉毀損で提訴し、会見する「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏=東京・霞ヶ関の司法記者クラブ
参政党の河西泉緒氏を名誉毀損で提訴し、会見する「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏=東京・霞ヶ関の司法記者クラブ

 「夜回り先生」の呼称で知られる元高校教諭で教育家の水谷修氏(66)が19日、東京・霞ヶ関の司法記者クラブで会見し、先の参院選の東京選挙区に参政党から立候補した河西泉緒氏(41)に街頭演説で名誉を傷つけられたとして330万円の損害賠償とツイッターでの謝罪を求めて東京地裁に提訴したことについて報告した。

 河西氏は6月21日に都内での街頭演説で「20代前半の頃に鎌倉駅でホームレスをしていた時期に『夜回り先生』に声をかけられ、性的暴行をされそうになったが、その男は逮捕された」という趣旨の発言をしていた。演説の動画は、動画投稿サイト「ユーチューブ」として参政党が設けたチャンネルでも公開された。訴状では、名誉毀損(きそん)であるとして、河西氏に損害賠償と謝罪広告(被告の固定ツイッターで公表日から1年間)」を求めている。

 水谷氏が河西氏の発言を知ったのは7月4日深夜。同氏は「過去にリストカットしたことのある少女から『先生、こんなのうそだよね』と私にメールがあり、ネットで確認した。その後も複数の子どもたちから『先生、こんなこと言われてるよ』と情報が入り始めた。ただ、その段階で動けば国政選挙に影響を与えるため、選挙が終わるのを待った。河西氏に発言の真意を確認したかったが、連絡先が分からず、弁護士に相談して告訴に踏み切った」と経緯を説明した。

 その上で、水谷氏は「あくまで河西氏個人の問題と考えており、参政党の問題にはしたくない」と強調。13日に週刊文春の報道があった同日深夜、河西氏の当該演説時に隣にいた参政党の神谷宗幣氏(44)=比例代表で当選=から謝罪したいという旨のメールが届き、携帯電話番号を伝えて話したという。その際、水谷氏は「河西氏本人ではなく、神谷氏に謝罪されることは筋が違う。あなた(神谷氏)と私の問題ではないという話になった」と明かした。参政党は15日に都内で会見を開き、河西氏は「夜回り先生」が水谷氏のことではなく、別人だったと釈明。また、河西氏と神谷氏らは「(発言の)一部だけが切り取られた」と主張していた。

 この「切り取り」主張について、原告・水谷氏の代理人である佃克彦弁護士は「今回提訴している部分は、河西氏が夜回り先生に関して言及したくだり全部を問題にしています。そういう意味では、こちらは『一部を切り取った』つもりは全然ないです。河西氏の『一部だけ切り取られた』という趣旨について、善解すると、『一連のストーリーを言う中で夜回り先生のエピソードを話したのであって、その部分だけを取り出すのは〝切り取り〟だ』ということなのかと。しかし、それは言われた方からすれば名誉毀損にほかならないわけです。なにも河西さんの発言を部分的に分断して、彼女の発言の趣旨を曲げて裁判所に持ち込んでいるわけではない」と説明した。

 水谷氏は「私のことでないのならば、『夜回り先生と名乗った』と言う必要もないわけです。自称の人もいるかもしれないが、『有名な夜回り先生』と言われてしまったら、まず間違いなく多くの人が私を連想する」と指摘。「そこは責任を取っていただきたいですが、河西氏本人から一切連絡はありません」という。河西氏の演説で「夜回り先生っていうのがいて、有名な。」という発言が、訴状に記載された夜回り先生に関する全発言内に明記されている。

 さらに、水谷氏は「15日の参政党の会見をネットで見ましたが、(水谷氏の対応について)『とりつく島がなかった』という発言には傷つきました」と語り、ホームページに子どもたちの相談を受けるメールポストがあり、同件に関して、水谷氏への批判や抗議、罵倒などを含むメールが791通あったという。一番多い内容は「誤解なんだから、なぜ訴えるんだ」というもので、人格をおとしめるような言葉も送られてきたという。水谷氏は「参政党の支持者、党員と名乗る方もおられる一方、名乗らない人が多いので、すべでが党の支持者とは言えないが、私はどんなにヘイトな内容であってもすべてに返事を出しており、(16日と17日は)ほぼ一睡もできない状態でした」とも明かした。

 水谷氏は「32年前から夜回りを始め、2004年2月に水谷青少年問題研究所を作り、暗い夜の部屋で明日を見失ってリストカットを繰り返し、薬のオーバードーズで死に近づく子どもたちと接してきた。『死にたい』『助けて』という電話は数えきれず、これまで受けたメールは約103万6000件、関わった子どもたちの数は50万3821人。(河西氏が被害に遭ったと話した時期は)夜回りをほぼ毎晩繰り広げ、10万人を越える子どもたちに声をかけていたので、その中で声をかけたり、名刺を渡したことがあるかもしれませんが、私の記憶の中には(河西氏の)顔や名前の人はいない。彼女も記者会見で『(水谷氏と)会ったことはない、知らない』と言っていました」とした。

 今回の提訴に込めた思いとして、同氏は「私の仕事は信頼性で成り立っている。仲間と共同運営する児童養護施設や児童自立支援施設を支援してくださる方たち、命の際にいる子どもたちの心に動揺を与えたことも許しがたい。(河西氏の発言した夜回り先生が)私ではないという事実を証明せざるを得ない」と訴えた。

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