発売63年目ホームランバー スピードガン、ドローンと景品に世相反映 応募方式にもこだわり

山本 鋼平 山本 鋼平
過去に景品になったホームランバークッション
過去に景品になったホームランバークッション

 1960年に登場した日本初の当たりつきアイス「ホームランバー」シリーズの新商品「ホームランバー 超ラッキーパック」(バニラ&チョコ味、いちご&チョコ味)は1日に数量限定で発売された。ヒット(一塁打)以上が必ず出るため、オリジナルペアTシャツの景品が楽しみの一つ。かつてはスピードガン(1980年)やUFO型玩具(1978年)、近年ではドローン(2018年)やLINEスマートスピーカー(2019年)など話題を呼んできた景品について、販売元の協同乳業に話を聞いた。

 一塁打、二塁打、三塁打、ホームランと4種類の当たり棒。ホームランは景品の獲得が確定し、三塁打以下は塁打数4(二塁打×2、三塁打と一塁打など)を1口に応募、抽選で当選者に景品が贈られる。オリジナルペアTシャツはそれぞれ大きさの指定が可能で、担当者は「親子、兄弟、カップル、祖父母と孫など世代を超えたコミュニケーションツールとして景品を楽しんでほしい」と語った。「当時の流行やターゲット層に喜ばれそうな景品を社内で協議する」といい、今回は商品の長い歴史に呼応するような、性別と世代不問のTシャツが選ばれた。

 四角く角張ったおなじみの形と風味。同社から1955年6月に発売された国内初のアイスクリームバーが、ホームランバーの原点だ。当時はアイスキャンディーが主流で、デンマーク・グラム社の自動充填・成型機マシンを導入したものの、アイスクリームを凍らせる型(モールド)の洗浄が困難との理由で、衛生面を不安視され製造許可が下りなかった。それでも交渉の末に当局から製造を認められると、ガラス張りの日本橋本社ビル1階工場は、ガラス越しに多くの見学者が集まる話題のスポットに。爆発的な売れ行きを誇った。

 やがてアイスクリームバーは他社の追随を受け失速。テコ入れ策が協議された。他社を参考にアイス棒に焼き印を入れること、焼き印を利用して当たりつきにすること、東京六大学野球で活躍していた立教大・長嶋茂雄の起用などを決めた。

 1960年1月、商品名「名糖アイスクリームバー ホームランシリーズ」としてリニューアル発売。同年3月、アイス棒の焼き印を利用した当たりつきキャンペーンを実施した。「満塁ホームラン」なら野球盤、グラブ、カール人形、玩具ミシンなどの景品を獲得。「ホームラン」はホームランバー1本、「三塁打」「二塁打」「一塁打」は合計塁打数4でホームランバー1本と交換する仕組みを導入した。立大からプロ入りしていた巨人・長嶋を起用したポスターも好評で、店頭から盗まれる被害が続出。この年、協同乳業がアイス業界で初めて売り上げ1位を達成した。「ホームランバー」の愛称が定着していったため、1965年に商品名が「名糖ホームランバー」に変更された。

 他社との競争に応じて、景品キャンペーンを実施した。1966年に「宙返りレーシングカーセット」「歩くお話人形ローリちゃん」、1968年に人気アニメ「マッハGoGoGo」とのコラボ、月面着陸人気で沸く1970年にはアポロシリーズが登場した。映画「未知との遭遇」が大ヒットした1978年にUFO型玩具を景品にした際は、アイス棒を残してアイス自体を投棄する行為が問題視された。1980年には野球人気を受けてスピードガンが景品に。スカウトが使うものではないが、電子メカIC機能を搭載した逸品で子どもたちを喜ばせた。

 1982年には駄菓子屋減少に伴い、スーパー向けの10本入りセットが登場。野茂英雄人気が高かった1996年には大リーグキャンペーン、2000年にはエポック社「エキサイトスタジアムDX」が景品に登場。近年はボールクッションなどの家具、トースターなどの家電、スプーンなどの食器、ドローンやスピーカーなど、子ども向け以外の景品も目立つようになった。担当者は「ホームランバーとともに、子どもが大人になり、親になっていく歴史を受けたものだと思います。どの世代の方にも楽しんでもらいたい。これからも欲しいと思ってもらえる景品を考えていきたいです」と語った。

 シリアルナンバー、QRコードにSNSなど、スマホを使った景品キャンペーンが盛んな今も、アイスの当たり棒を郵送する応募方式を続けるホームランバー。「食べながらアイスバーを確かめて、当たりか外れか、ドキドキワクワクする体験を持ってほしい。デジタルの方が管理は楽ですが、昔ながらの方法の価値はあると思います。これからも続けていきたいですね」。アナログの魅力を大切にしながら、時代に応じた景品を考えていく。

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