将棋の藤井聡太棋聖(竜王、王位、叡王、王将との五冠)に永瀬拓矢王座が挑戦するヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局が3日、兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で指され、2度の千日手指し直しの末に永瀬王座が114手で勝利。藤井棋聖のタイトル戦番勝負の連勝記録は歴代2位タイの「13」でストップした。
今局はまず相掛かりで進み、序盤の昼食明けに一度、千日手の筋が現れ、永瀬王座が回避した。その後、66手で千日手が成立。指し直し局は先後が入れ替わり、永瀬王座が先手に。戦型は角換わりとなったが、序盤からまたも千日手模様に。双方、時間を使わず、53手ですんなりと2度目の千日手が成立した。
タイトル戦で千日手が1局で2回成立したのは、2002年の第15期竜王戦、羽生善治竜王―阿部隆七段(当時)戦の第1局以来。歴史的な〝珍事〟を受けて迎えた2度目の指し直し局の戦型は、再び角換わりとなった。藤井棋聖は中盤から何度か長考したが、形勢は徐々に永瀬王座に傾き苦しい展開に。終盤は持ち時間に1時間近くの差を付けられた状態で1分将棋となり、粘りを見せたものの、永瀬王座の正確な指し回しに屈した。
大熱戦を落とした藤井五冠は局後、まず1局目を「2歩得ではあったんですけど、打った角が負担になってしまって、こちらが失敗してしまったのかという気がしていました」、1度目の指し直し局を「角換わりの後手番で、千日手はこちらからしたら致し方ないのかなという気がしていました」と回顧。決着となった2度目の指し直し局には「流れを止めることが出来なかった。長考したんですけど、本譜はちょっと苦しくしてしまった」と反省を口にし、「全体として思わしい展開にできなかったと思うので、しっかり反省して次に臨めたらと思います」と淡々と述べた。
藤井棋聖は昨年8月の王位戦第5局から今局前まで、タイトル戦の番勝負で羽生善治九段と並ぶ歴代2位タイの13連勝をマークしていたが、無念のストップ。歴代1位の故・大山康晴十五世名人の「17」には届かなかった。