近年、格闘ゲームの多くはオンライン対戦が主流となりつつある。それはアーケードゲームでも同じ状況。アーケードゲームはゲームセンターでの対面の対戦が大きな魅力だったのだが、オンラインの台頭、そしてコロナ禍によりその場所が失われつつある。
今、そんな状況を打開し、ゲームセンター文化を守るためのあるプロジェクトが動いている。2010年に稼働開始した「エヌアイン完全世界」の新作が、アーケード専用、しかもオフラインでの対面対戦を主体とした仕様で配信されるのだ。
それが「エヌアイン完全世界 Anastasis(仮)」だ。
「エヌアイン完全世界」は奥深い攻防システムに多くのファンを持つが、今も移植は行われておらず、遊ぶにはゲームセンターに足を運ぶ必要がある。今回のコンセプトにはピッタリのゲームだ。
プロジェクトの発起人の南森町コーハツ・松井店長にお話を聞いた。
橋本ダイスケ(以下、橋本):今回のプロジェクト発表の反響をお聞かせください。
松井:続編制作の発表をしたところ、多くのニュースサイト様に取り上げていただきました。Twitterのトレンドにも入ったらしく、既存ファンの方々だけでなく、他のゲームのプレイヤーや海外の方々からも予想をはるかに上回る反響があり、正直驚いております。
近年、ゲームセンター向けの対戦格闘ゲームの新作タイトル数が激減しています。格闘ゲームの主流が家庭用ゲーム機メインに移った結果で、ゲームセンターは以前に比べて活気を失いつつあります。
「インカムが増えない→新作を導入しない→メーカーが開発を行わない」という悪循環を繰り返してきました。
このまま新作が稼働されず、レトロゲームだけに頼っていては、いつか必ず限界が訪れます。アーケード格闘ゲーム文化そのものが消滅してしまうかもしれません。
コロナ禍以前より、この現状をどうすれば打破できるのかずっと考えてきました。そこで「エヌアイン完全世界」の制作者に続編をお願いし、微力ながらクラウドファンディングで支援しようという流れです。
今回のクラウドファンディングは「All-In方式」で実施いたしますので、想定した目標額に達成しなくても開発やリターンが中止になることはありません。ご支援をお考えの方は、安心してご応募いただければと思います。
橋本:現状オフラインと発表されてますが、オンラインに対応する予定はあるのでしょうか?
松井:まずはオフライン対戦の「NESiCAxLive(ネシカクロスライブ)」にて稼働させるのが目標です。ゲームセンター間のオンライン対戦での配信は、現在検討中です。。
「NESiCAxLive」は全国のゲームセンターで稼働しており、オフライン対戦環境が存在しています。こんなご時世ですが、人対人の対面のコミュニケーションを感じてもらえれば幸いです。
橋本:後々に対戦会や大会を行う可能性もあるという事でしょうか?
松井:前作の「エヌアイン完全世界」の対戦会、大会は現在も開催中ですので、新作が稼働されたタイミングでそちらに移行する予定です。公式全国大会「電光大戦」も引き続き実施予定です。
また、アナログのカードを使用したランク制みたいなものができればと考えております。
橋本:もしかすると、協賛している各ゲームセンターとの対抗戦等も行ったりする予定はあるのでしょうか?
松井:2008年よりSUBTLE STYLE公式大会「電光大戦」を運営し、8回実施しております。9回目を2020年に開催予定でしたがコロナの影響により延期中です。
新作が稼働したタイミングでコロナが落ち着いていれば、予選を用いた公式全国大会を開催したいと思っております。
橋本:今後の「エヌアイン完全世界」を用いた展望があれば、お聞かせください。
松井:高い評価を得た本作ですが、実は本来予定していたキャラクターの半分しか実装されていません。開発当時にリーマンショックの被害を受け、未完の状態で世に送り出されたのです。
クラウドファンディングの結果次第ですが、今後は定期的にアップデートを行い、キャラクターやスト-リーを追加したいと考えております。そしてアーケードで末永く遊んでいただきたいです。
◇ ◇
お話を聞いてゲーセン文化、対面対戦文化を守りたいと言う熱い気持ちが伝わった。今回のクラウドファンディングでは様々な魅力的なリターンが用意されているので、ぜひ多くの方にチェックしていただきたい。
SUBTLE STYLE公式大会「電光大戦」:http://www.ko-hatsu.com/akatsuki_official/
アーケード格闘ゲーム開発支援プロジェクトクラウドファンディングサイト:https://ci-en.net/creator/5780/crowdfunding/287