ロシア軍が2月24日、ウクライナに侵攻し、首都キエフや各地の軍事施設をミサイルで空爆した。今後の行方はどうなるのか。女優でジャーナリストの深月ユリア氏が、ウクライナ人の国際政治学者に話を聞いた。
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ロシア軍がウクライナに侵攻した。昨今、中国の習近平主席と結び付きを強めるプーチン大統領だが、開戦は狙ったように北京五輪直後となった。
ロシアは同21日、「ウクライナはNATOに加盟しロシアを攻撃しようとする」と主張し、「自国民保護」の大義名分のもと、親露派支配地域であるドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を一方的に承認。プーチン大統領のやり方は日本が太平洋戦争で「満州の独立」を主張し、中国に侵攻した戦法と類似している。
では、ウクライナ情勢はどうなるのか。筆者はウクライナの国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏(@gurenko_andrii)にインタビューを行った。
--開戦が北京五輪直後となりましたが、中国も絡んでくるのでしょうか?
「中国がウクライナの戦争に軍隊を出す可能性は低いと思いますが、欧米諸国から経済制裁されているロシアに経済的支援はするでしょう」
--ロシアとウクライナが全面戦争に突入する可能性はありますか?
「プーチン大統領は2014年に自ら署名したミンスク合意(ウクライナでの戦闘の停止)を踏みにじりました。全面戦争になる可能性と局地戦になる可能性とがあります」
--プーチンは「ウクライナがロシアを攻撃しようとしている」と主張しましたね。
「軍事力を比べてもウクライナがロシアを攻撃するのは無理です。兵力はロシア100万人、ウクライナ21万人。防衛費はロシア600億ドル、ウクライナ60億ドル。ロシアは世界一の核大国で水爆も所有、ウクライナは非核国。GDPではロシアは1兆7千億ドル、ウクライナは2千億ドルですよ」
--ウクライナがNATO加盟を諦めたら戦争は止められますか?
「いいえ、ロシアの狙いはウクライナのNATO非加盟ではなく、ウクライナの支配です。非加盟を宣言したら、引くどころか、さらにに攻めるでしょう。プーチン大統領は2010年からウクライナを支配しようと準備してきました。彼はソ連の崩壊は『間違っていたことであり、旧ソ連圏はロシアから不当に奪われた土地だ』と考えています。さらに『ウクライナ民族はロシアと同じ民族』だと主張する論文も執筆して大統領府のHPにも公開しています」
--国際社会はどうすればよいですか?
「日本含め、足並みをそろえて強固な経済制裁を発動し、ロシアを経済封鎖し、ロシア人の在外資産を差し押さえする。ウクライナを経済支援する。『対露制裁が効かない』と主張する専門家もいますが、彼らはロシアのプロパガンディストの可能性があり、プーチン大統領の考え方に世論を誘導しています。今後の情勢は米バイデン大統領がどこまで強固な決断をするか、米軍とNATO軍が動くかによっても変わるでしょう」
刻一刻と緊迫するウクライナ情勢から目が放せないが、全面戦争になることだけは何としても避けたい。