マックのポテトM以上が一時販売停止!牛丼、パン、ドーナツ等が値上げ「メリハリ消費」で対策を

北村 泰介 北村 泰介
12月24日から30日まで販売休止なったマックフライポテトMサイズ。原因は海外の情勢にあった
12月24日から30日まで販売休止なったマックフライポテトMサイズ。原因は海外の情勢にあった

 日本列島に「ポテトショック」の衝撃が走った。日本マクドナルドは24日から全国の店舗でマックフライポテトのMとLサイズの販売を1週間の予定で一時休止。ポテトの経由地であるカナダ・バンクーバー港近郊での大規模水害やコロナ禍での物流網の乱れで輸入に遅れが生じているからだという。前日には牛丼チェーン「すき家」が今秋の松屋、吉野家に続いて値上げし、デフレ時代の終えんを痛感させられた。輸入に頼る日本での商品の販売休止や値上げを受け、流通アナリストの渡辺広明氏に話を聞いた。

 「マック(マクド)でポテトのMサイズとLサイズが1週間お預けになる!」ということで、販売休止前日の23日に都内の通い慣れた店舗を訪れると、通常より長い行列ができていた。いわゆる「駆け込み需要」というやつだ。

 この期間中も、Sサイズ(74グラム)は通常通りに販売され、大みそかからMサイズ(135グラム)以上も復活する予定。それほど騒ぐことかという感もあるのだが、それだけ「マックのポテト」は消費者感情を左右する大きな存在になっている。現時点でポテトが値上げするわけではないが、輸入に頼る日本の外食チェーンにとって、海外で何かが起きると影響大ということが伝わる事案だった。

 一方、400円に戻った牛丼について、渡辺氏は「デフレ価格がもたなくなったことの象徴」と指摘。一時は牛丼並盛りが280円ほどに値下げされ、ハンバーガーチェーンでも100円を切る商品も出現。平成のデフレ商品となったが、その時代は終わった。

 渡辺氏は「海外では安いコストで調達が可能だった原材料、製造拠点の新興国での経済成長やコロナ終息に向けた経済の回復およびその後の成長や人件費の上昇、原油高などさまざまな要因が絡まり、国内でも外食産業や小売店での最低時給のアップで人件費アップも重なり、コロナ禍での経済的な停滞もあって状況は変わった。『適正価格』に戻っていく流れ」と背景を解説した。

 その上で、同氏は「日本は海外との交易によるものが多く、輸入に頼っているので、今後、国内の生産見直しや、一国に頼らない輸入国の多様化も検討していく必要がある」としたが、そのハードルは高い。

 給料は上がらないのに物価が上がる「スタグフレーション」(※景気後退の中でインフレが同時進行する現象)になれば、当然「節約」という発想になる。だが、その考え方を渡辺氏は危惧する。

 「今まで給料が伸びなくても、デフレで助かっていたが、これからはそうはいかない。低価格に慣れていた消費者は収入が上がってないので節約することになると、日本経済はマイナスのシュリンク(※低迷)が加速する。節約ばかりだと日本経済は終わってしまう」

 その対策として、渡辺氏は「メリハリ消費」を掲げた。

 「みんなが節約モードに入ると、人口減やコロナ禍で痛んだ経済は立ち直りが厳しくなり、企業業績が低迷すると雇用が不安定になり、給料のダウンにつながる可能性も高いので、リベンジ消費は『メリハリ消費』で乗り切るべき。ぜいたく三昧をするということでなく、回転寿司で100円の皿を取りながら、たまに300円の皿を取ってみるという程度でいい。好きなものを余分に買ったり、1・2倍ぐらいの価格のちょっとしたぜいたくのメニューや商品を買うといった、メリハリをつけた個人消費のことです」

 そして、今回の「ポテトショック」で注目されたマクドナルドについて、渡辺氏は「デフレから脱却するモデル」を体現していると語る。

 「一時、ハンバーガーが100円を切ることもあったが、今は単価の高い期間限定商品などに売り上げがシフトしている。また、マクドナルドでは新商品やセットで単価アップしているのに対し、安価なハンバーガーやチーズバーガーの比率はダウンしています」と解説。また、他業種については「回転寿司は立地によって値段を変える。100均ショップは300円など、100円以外の価格の商品が増えて、ダイソーでは300円ショップを展開している」と具体例を挙げた。

 今後は、どのような商品が値上げするのか。渡辺氏は「回転寿司や焼肉食べ放題にも影響するのでは?また、小麦粉、サラダ油、マヨネーズなどの価格もアップするなど、肉以外も食品を中心に値上げ傾向にある」と推測。この「小麦粉」の価格上昇が主因となり、山崎製パンは来年1月に食パンと菓子パンの一部を、ミスタードーナツを運営するダスキンは同3月にドーナツなどの33商品を値上げすると発表した。

 原材料を海外に依存している限り、コロナ禍が続く新年も各業界での値上げは続く可能性が高い。そう考えると、「メリハリ消費」は時代を生き抜くキーワードになるかもしれない。

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