1989年から91年まで「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載された「サルでも描けるマンガ教室」(通称「サルまん」)を原作とした「舞台サルまん」が今月15日から19日まで、東京・小劇場B1で上演される。原作者の相原コージと竹熊健太郎が自ら作中に登場し、「マンガで日本を征服する」という野望に向け、業界を縦横無尽に分析し尽くしたコメディを初舞台化。脚本・演出を担当した田中大祐(45)に話を聞いた。
田中は立大卒業後、テレビの世界に飛び込み、放送作家としてお笑いを中心に様々なバラエティ番組を手掛けてきた。
近年は脚本、演出業に軸足を置く中、自身が主宰する劇団・気晴らしBOYZの10周年記念公演に同作を選んだ。「周りからはなぜ、と不思議がられるのですが、コロナ禍で2年ぶりになるプロデュース公演を、個人的に大好きな作品で臨みたかった。竹熊と相原の会話劇と劇中劇『とんち番長』は、舞台に合うとも以前から考えていました」と語った。
中学生の時、同作に衝撃を受けた。漫画、お笑い、音楽や映画などサブカルチャーに関心を持つきっかけになった。「漫画や業界を分析する面白さを知り、漫画読みとして一段階レベルが上がったような気がしました。そして自分も作家になりたい、と考えるきっかけになりました」。放送作家として駆け出しの頃、尊敬する先輩から「エンタメを因数分解して再構築する」大切さを教わった。「『サルまん』で行われた、歴史や手法のマップをつくり、サンプリングしながら新しいモノを模索していくのと一緒だと思いました。創作におけるそうしたスタンスは、自分の中に今も影響が残っているかもしれません」と自己分析した。
原作者は関与しない。竹熊は「なんじゃそりゃ~」と反応したというが、禁止事項や要望や助言などの注文は一切ない。出版社を通じて許諾を得た田中は「細かくチェックする原作者もいらっしゃるので、うれしい反面、怖いですね。原作の大ファンである自分を信じるしかありません」と覚悟を決めた。両者は観劇に訪れる予定だという。
原作から30年。各少年誌を「桃太郎」になぞらえた分析が有名だが、スポ根と評された「マガジン」は、今やラブコメが主流となった。田中は「思い切って現代風にアレンジした箇所はあります」とした上で「竹熊と相原の会話劇と『とんち番長』が舞台上で垣根を取り払って、カオスな感じに表現できていると思います」と手応えを語った。ネタバレ上等で胸を張りたい箇所がある。「原作では改編されてしまった『とんち番長』のテーマソングですが、少しだけ描かれていた原案の歌詞を膨らませて、僕が完成させました。曲も80~90年代の雰囲気に仕上がりました。楽しみにして下さい」と、来場を呼び掛けた。
原作を知らない人にも衝撃を与えたいと意気込むハチャメチャコメディ。相原コージを錦織純平、竹熊健太郎をコウガシノブが演じる。彦一役のドロンズ石本、一休役のアモーレ橋本、吉四六役の杏さゆりのほか、栗原卓也、佐野寛大、青地洋、両國宏、石橋保が出演する。田中は「竹熊は時代がかった調子でうんちくや分析を語りますが、相原は相づちとリアクションが多いので、主役ふたりでセリフ量が5倍くらい違います。竹熊役が大変そうです」と少し心配していた。