お店のラーメンが自販機に! 1台で1日600食の”バカ売れ”も 躍進を続ける「ヌードルツアーズ」とは

松田 和城 松田 和城

 

 全国有名店のラーメンを手軽に購入できる冷凍自販機「ヌードルツアーズ」をご存じだろうか。今年3月の販売開始後、その人気は瞬く間に広がり現時点で、総台数は50を超える。取材に応じた丸山製麺代表取締役・丸山晃司氏(34)は、「1日の最高では1台で600食売れたこともありました」と明かした。

 

 自販機には約20種類の全ラインナップから厳選された5つの商品画像が並んでいる。24時間いつでも、自宅での湯煎簡単調理で、お店ながらの本格的な味を楽しむことが可能だ。その目新しさは、SNSや人気ユーチューバーを通じ拡散。「帰れマンデー見っけ隊!!」(テレビ朝日系)や「アッコにおまかせ」(TBS系)などのバラエティー番組で特集され、大きな反響があった。600食を売り上げた日は、想定を超える商品の補充を求められたため「無人を売りにしたんですけど、結局人がずっといるっていう状況でしたね」と苦笑いを浮かべた。

 きっかけは、コロナ禍の影響。製麺業の自社売り上げ減少に加えて、時短営業で悩んでいたラーメン店の問題を互いに解決できるアイデアを模索していた。他のさまざまな要素も含め、非対面式で24時間対応可能な「冷凍ラーメン自動販売機」のアイデアが生まれた。サービス名「ヌードルツアーズ」に込めた思いは「旅行の疑似体験」。「コロナ禍でおうち時間を楽しんでもらうというコンセプトでした。メインとなる東京のラーメンの味を地方に届けるというイメージです」。11月1日には沖縄に初上陸を果たし、広がりを見せている。

 スープと具材は、ラーメン店で調理したものをそのまま冷凍化し提供。麺に関しては、自社製造と異なるものを使用している商品が多いため、試行錯誤を重ねた。「麺は完全に私たちでつくるので、何回も試食会とかをするんです。多いときには7,8回します。なので、実際にリリースされるまでは数カ月かかりますね」と説明した。商品を食べたテレビ番組の出演者やユーチューバーの間でも好評の味に仕上がった。

 丸山氏は、4年前までネット広告やウェブマーケティングに関わる職に就いていた。その経験を生かし、サービス開始前にはツイッターキャンペーンを実施。公式アカウントが製麺所で最大のフォロワー数になるほどの成功を収めた。「ネット系の会社がやっているような戦略をとっています。WEBマーケティングに強いっていうのは大きいと思います。製麺所っぽくないなというやり方はしていますね」と自信を口にした。

 全国で設置場所の網羅率を上げることを直近の目標に掲げている。設置依頼も多く月に数百件の問い合わせがあるという。以前は月に1、2箇所だった増加ペースが、現在では2日に1箇所のハイペースと勢いは止まらない。”躍進”の約8カ月を振り返り、「製麺所なので、ラーメン屋さんに人が流れてくれた方がうれしいんです。『ヌードルツアーズ』を食べてその店を知って、実際に店舗に行ってくれた方がいたのが結構印象的でしたね」と笑顔を見せた。

 製麺業界は、戦後まもない創業社が多いため高齢化が著しい。丸山氏は業界全体の盛り上げに意欲を見せる。「製麺業界がめちゃくちゃ廃業しているんです。後継者問題もあって、あまり業界全体に元気がない。こういう中小企業でも新しいことをやって盛り上がりを出していくのが、中長期的な目標ですね」と言葉に力を込めた。

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