M―1唯一のアマファイナリスト 変ホ長調がTHE W決勝へ猛アピール「プチリッチになりたい」

山本 鋼平 山本 鋼平

 漫才コンテストM―1史上唯一、アマチュアファイナリストの偉業を誇る変ホ長調が27日、都内で女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」の準決勝に臨んだ。昨年をもって結成15年以下というM―1の出場条件を喪失したコンビは、心機一転の初挑戦で決勝進出を猛アピール。「プチリッチになりたい」と優勝を目標に掲げた。

 日常会話のようなやり取りで老いや社会問題、芸能界を存分に横断する持ち味を発揮。くすくす笑いから大きな笑いまでが会場を包んだ。ツッコミの小田ひとみ(56)は「間違えることがなくて、狙っていたところで笑いが取れたので良かった」と手応え。ボケの彼方さとみ(51)は「楽屋がキレイで爽やか。においが全然違います」とM―1との違いを指摘した。

 会社員との二足のわらじを履きながら、コンビを結成した2005年にM―1初出場で準決勝進出、翌06年には決勝舞台に立った。ふたりはいまも会社員。「アマ唯一」の勲章は代名詞になった。昨年まで計12回挑戦し、19年は準々決勝まで進んだ。ラストイヤーは2回戦で敗退。大きなさみしさを感じたが、コラム執筆、演劇の配信フェス出演の依頼に応じる中で「なんとなくM―1が終わったから次は(THE)Wかな」(小田)、「M―1が終わったからといって、漫才をやめる気はなかった。ただ、昨年はコロナでネタ合わせが満足にできない中での2回戦(敗退)。少し悔いはありました」(彼方)と、ふたりにとって自然な流れで、同じ賞レースである「THE W」を新たな目標に定めた。

 M―1への感謝の思いは尽きない。06年決勝ファーストラウンドでは優勝したチュートリアルの次が変ホ長調、その次が笑い飯の順番だった。小田は「(プロ芸人にとって)私たちは迷惑かなあ、とか、優勝候補に挟まれていたので大ポカしたら迷惑をかけてしまうかなあ」という心境だったが、彼方は「決勝に出場された皆さんがすごく優しくて、何の垣根をつくらず接してくださったので、逆にわたしたちが感動しました」と振り返った。

 最近はコンプライアンスを求める風潮が強く、ネタに有名人や商品名を登場させにくくなっている。「昔に比べて厳しいので調整が大変」(彼方)、「2回戦までは緊急事態宣言の中だったので飲みに行ったりカラオケをするネタは変えたりしていました」(小田)と言いながらも、この日はしっかり独自の世界観を漫才に反映させた。

 準決勝には38組が出場。28日までの二日間にわたって、それぞれが別のネタを披露する。翌日に向けふたりは「しっかり練習します」と気を引き締めた。12月13日に日本テレビ系で生放送される決勝進出者の発表は後日行われる。06年のM―1決勝出場者が登場した「M―1リターンズ」以来というテレビ地上波での漫才披露も夢ではない。賞金1000万円。小田が「優勝したいです」と宣言すれば、彼方は「プチリッチになりたいよなあ」と呼応した。ネタは友人たちと協力して作成しており「みんなで分けて、お世話になっている人にお返ししたら、プチリッチくらいになれるのかな。でもいろいろ考えちゃったりするかも」と、ふたりは笑った。

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