あえて「長期保存はできない」備蓄食 昔ながらの味を楽しむ米農家の挑戦

 島根県邑南町で米などを生産する「沼田農園」の沼田高志さん(32)がこのほど、オリジナルの災害備蓄食を開発・発売した。昔ながらの保存食を取り入れた、農家ならではの視点から生まれた備蓄食。一般的な保存食よりも保存期間は短いが、ローリングストック方式と組み合わせることで特徴が生かせると話した。

 9月下旬に発売された新商品「農家のこだわりローリングストック食」は、乾燥野菜などの具と、沼田さんが作った米、加熱用の固形燃料などのセットが毎月届けられるサブスクリプションサービス。メニューは米を中心とした料理で、毎月異なる。第1弾の11月号では島根県産の乾燥キノコを使用した「キノコのリゾット」、現在販売中の12月号では「炊き込みチャーハン」を作れるセットが販売されている。

 調理方法はシンプルで、セット内容の無洗米と具、水をメスティンと呼ばれる飯ごうに入れ、燃料で加熱するのみ。浸水時間30分~1時間と、加熱し蒸らす約30分間で完成するという。1食あたり3~4人前で、1カ月ごとに2食分が届けられる。沼田さんは「そのうちの1食を食べて、1個残してもいいし、2つとも残してもいい」と説明した。

 具材にはキノコなどの乾燥食品を採用。昔ながらの保存食である「乾物」には素材うまみが凝縮されていると解説する。レトルトや缶詰の備蓄食は数年間保存できるものがある一方、沼田さんが作る商品の賞味期限は約半年から1年間。「そこまで長期保存はできないんですけど、長期保存できないぶん、ローリングストックを入れたら、楽しみながら作れて面白いんじゃないかなと」。備蓄食を日常的に消費して入れ替えるローリングストックを取り入れることで、期限が比較的短い保存食も有効に楽しめるという。

 今後は塩漬けの保存法「塩蔵」や発酵を用いた商品の開発を目指す。沼田さんは「長期保存した場合にどうなるかがまだよくわかっていないので、実際に作って1年くらい保管してみた後でラインアップに組み入れていけたら」と意気込んだ。

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