バブル崩壊後、断捨離やミニマリストがブームに。更に無印良品の登場などでシンプルな暮らしが一般的になった今、昭和の実家の必需品であるド派手な花柄の毛布で作品を制作するアーティスト「江頭誠」が話題になっている。なぜ”ダサい”といわれる毛布で作品を作り続けるのか。話を聞いてみた。
――なぜ、この実家感溢れる毛布で作品を作ろうと思ったんですか?
江頭:大学時代1人暮らしをしている時使っていたのが、母親が送ってくれた花柄の毛布でした。友達に「ダサい(笑)」と言われ、今まで意識していなかった花柄が急に恥ずかしくなったのを覚えています。そこからずっと毛布が気になってて。それが、”ダサい”とは?逆に”カワイイ”って何だろう?と考えるきっかけになりました。
――最初に制作したのは何だったんですか?
江頭:大学の卒業制作で「大阪・冬の陣」というタイトルの巨大なぬいぐるみを毛布で作りました。
締め切り1カ月前に思いついて、慌てて作ったので体力的には大変でしたが、閃いてから時間が空くと飽きちゃうので良かったかもしれません。反応速度って大事ですよね。失敗してもいいから思いついたら作って、また考える感じが自分には合ってると感じてます。
――大阪城は確かに勢いを感じました(笑)。岡本太郎現代芸術賞を受賞した「毛布の霊柩車」は、どこから閃いたんですか?
江頭:本物の霊柩車が手に入らなかったので、まず発泡スチロールを削り実物大の霊柩車を作って、その上に毛布を貼りました。
大学では彫刻を専攻していたので、彫る作業は楽しかったです。でも彫った跡があんまり好きじゃなくて…毛布を貼ることでバランスをとっていたのかもしれません。霊柩車をモチーフにしたのは、上が和風なのに、下がリンカーンという和洋メチャメチャMIXな感じがおもしろくて。花柄毛布も和風とロココ調のMIXで共通してますよね。西洋文化がグラデーションのように入り込んでいるのに違和感ないことに惹かれました。
――トイレの個室まるごと、など大きいものでは空間全てを毛布で包んでいますよね。
YUKIさんのMV「My lovely ghost」はゴージャスな世界観に圧倒されました。
江頭:元々LEGOが好きだったので、ベースの上に街や城を配置していく遊びに通じているのかもしれません。”遊ぶ”ことが一番大事で、ワクワク感はずっと持っていたいと思ってます。YUKIさんのMVに参加できたのは本当に嬉しかったです!元々持ってる作品にプラス新作何点か、という感じで制作しましたが、毛布はおよそ200枚くらい使用してます。数えたことないですが(笑)。
――小さいものでは、王将の駒、ミニ四駆、西郷隆盛像など、個性的なモチーフはどうやって選んでるんですか?
江頭:共通してるのは流行って廃れたモノ、無意味とされているモノです。花柄毛布自体も昭和43年くらいに大流行したそうですが、今ではダサいとされてます。でも10代20代前半の人からは逆に新しく「かわいい!」という声もあるんですよね。そういう感覚って時代によってぐるぐる回っていて、自分の気持ちや価値観も日々変化しているんだと思います。常にやわらかくいたいですね。毛布だけに。
――うまい!これからも華々しいご活躍楽しみにしています。花柄毛布だけに。
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高度経済成長時、欧風文化への憧れが生んだ花柄毛布は、令和で現代アートを賑わす存在に。若者が見つける新しい”カワイイ”は、中年以上の”懐かしい”であった。
江頭誠
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