俳優ヴァル・キルマー(61)のバットマンの夢は、バットマン衣装を着るという現実によって「潰された」そうだ。1995年に公開された映画「バットマン フォーエヴァー」でタイトルロールを演じたヴァルは、最初は「究極の主役」にキャスティングされたことを喜んだものの、衣装を着ての演技は大変だったという。
アマゾン・プライムで公開されたドキュメンタリー「ヴァル」では、俳優人生、キャリア、そして咽頭がんとの闘いが語られるほか、ジョエル・シュマッカー監督による同映画でのヴァルの経験については息子のジャックがナレーションを担当している。
役のオファーを受けた時のことをヴァルはこう振り返っている。「ショックと信じられない気持ちでいっぱいだったよ。人里離れたコウモリの洞窟を探検したばかりだったからね」「ハリウッドじゃバットマンは究極の主役だから、夢のようだったよ。脚本も読まずに役を受けたね」「でも、少年のようにワクワクしていた私は、バットマンの衣装の現実に押しつぶされたよ。着ている時はほとんど動けないし、立ったり座ったりする時は人の助けが必要なんだ」「しかも、何も聞こえないから、しばらくすると人が話しかけてこなくなってとても孤独だったよ。衣装を着て演技をするのは大変だったし、映画の中での自分の役割は、ただ現れて、言われた場所に立つことだと気づくまでは、もどかしかった」
またヴァルは、共演者のトミー・リー・ジョーンズやジム・キャリーが衣装に縛られずに演技できたのに対し、自身の役が恋心を寄せるチェイス・メリディアン博士を演じたニコール・キッドマンとのシーンでは自分は「昼ドラの俳優」のようになろうとしていたと嘆いた。
「トミー・リー・ジョーンズのような俳優は、全体の演技をものにしていた。ジム・キャリーもそうだった...あまりにもすごすぎて、僕が何をやろうとあまり影響は出なかったと思う」「私は昼ドラ俳優のようになろうとしていた。ニコルの方への向き方とか、何回腰に手を当てたか数えてたりしてね。どうしたらこんな演技スタイルを思いつくのかはわからないけど、『昼ドラ風に』っていうだろ」と続けている。