誰にも言えないことありませんか?秘密を集める屋台「ひみつ屋」 セメントで固めて“販売”

ゆきほ ゆきほ

「好きだった人のアカウントを毎日監視している」

「夫が女性の名を使って女性宛のラブレターを書いていた」

「学校の先生と学校の外で会っている」

口に出したら最後、人間関係や生活が壊れてしまう”墓場まで持っていく”しかないような秘密

今、インターネット上では、なんとそんな個人の秘密を収集してオブジェにして販売する「ひみつ屋」が話題になっている。「ひみつ屋」木村りべかさんに話を聞いた。

――ひみつ屋とは、一体どういうものなのでしょうか?

木村:2018年から、屋台を引いて道行く人に秘密を紙に書いてもらって、その紙をセメントで固め、打ち明けた人の言い値で販売する活動を始めました。最高値は5000兆円、最安値は-5円。現在は新型コロナウイルスの影響で対面での収集はお休みしているのですが、商業施設などでリモート収集、ネットで公開したい秘密を集める活動、秘密を布に刺繍した作品制作などを行っています。

――はじめたきっかけは何だったんですか?

木村:2018年に私自身に秘密ができてしまい、偶然全く面識のない方に打ち明ける機会がありました。なんだかすごく楽になって、秘密の共有はおもしろいなと。私は美術大学を卒業してるので、何か作品や活動にできないかなと考えました。セメント固めることによって目に見えない秘密を実体化させ、”確かに存在する”ことを表現できたら面白いだろうなと。生活の積み重ねの中で秘密ができてしまい、ただ善い悪いで判断できないことも多々あるはずです。そういうものを作品にすることによって、ただ肯定したいという気持ちが発端です。

――なかなか知らない人に秘密を打ち明けるは勇気がいると思いますが、秘密を打ち明けてもらうための工夫はありますか?

木村:普通の恰好では絶対に無理だと思ったので、非日常な雰囲気づくりを心掛けました。街中で異様に目立つ屋台を自作して、私自身も秘密をガッチリ固める職人のような衣装を着てます。

実際、購入した方はセメントを壊して中身を見ることができるのですが、ちょっとやそっとでは破壊できないハードな素材を選んでるんですよ。あとは、預けていただいた秘密の内容は絶対に見ません。ネットで公開したい秘密を集める際も、個人情報は不要にしています。

――活動を始めて分かった人間の面白さはありますか?それとも、絶望したり嫌悪感が沸いたりしませんか?

木村さん:印象は、圧倒的に前者です。みんな誰かと共有したいんだなと。本人にとっては重苦しい内容かもしれませんが、固めた後に「この人スッキしてそうだな~」という姿を見ると、ちょっと人の役に立てたかもと嬉しくなります。

――今後の活動については?

木村:今までは値段をつけていたのですが、”秘密の面白さ”より金額の方に注目されていると感じたので、今後は”次秘密を打ち明けに来られた方に固めた秘密を託す”という仕組みを考えています。コロナ禍を機に、秘密を書いた紙を郵送していただき、私がセメントで固める「ひみつ屋リモート参加キット」もあります。でも、やはり状況が落ち着いたら色々な街に屋台で行ってみたいですね。

◇ ◇ ◇

実は筆者も、ひみつ屋ホームページに1つ秘密を投稿してみた。たまに思い出しては重く苦しい気持ちになり、誰かに全部ぶちまけられたらどんなに楽かと思い続けてきたが、投稿してみると想像したより遥かに心が軽くなったことに驚いた。どこかに吐き出すだけで、これほど救われるとは。悩んでいること、心に刺さった棘のような後悔が辛い方は、ひみつ屋に打ち明けてみてはいかがだろうか。

 【ひみつ屋(木村りべか)プロフィール】

アーティスト
1987年生まれ・群馬県出身

“誰かの秘密” 公開webサイト:https://www.himitsuya.com/

Twitterアカウント:https://twitter.com/himitsu_yasan

 YouTubeチャンネル:https://youtube.com/channel/UCQj8-wXLiF7SsxDKDxl0iWA

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