キン肉マンのファミコンカセットが、100万円近くの値をつけた。1985年11月に発売されたファミコンソフト「キン肉マン マッスルタッグマッチ」(85年、バンダイ)の日本に8本しかない非売品のゴールドカートリッジ版が5月、突如フリマアプリに出品。95万円で落札され、レトロゲーム愛好家の間で騒然となった。
ギザギザの赤いカセットに「あー、あったあった!」と、郷愁を覚えるおっさんも多いだろう。当時100万本を超える売上を記録。2頭身のキン肉マン8超人が登場する対戦型プロレスゲーム…だが、試合途中でランダムに登場するミート君が投げる「命の玉」をキャッチできるかどうか、だけが勝負を左右した。
「命の玉」をキャッチすると、超人が点滅して無双状態に。キン肉マンはキン肉マンドライバー、バッファローマンはハリケーンミキサー、といった必殺技が使えるのだが、ウォーズマンのベアークローとブロッケンJr.の毒ガス攻撃(よく考えると、父・ブロッケンマンの技のような…)がハメ技になった。
神をも超える友情パワーがだいご味のキン肉マンだが、このハメ技のせいでケンカになり、友情が壊れることもしばしば。私が通っていた小学校では「ブロッケン禁止」の暗黙ルールがあった。カセット発売直後は誰かの家で、マッスルタッグマッチを遊んでいた記憶がある。
ソフトが発売された1985年に「キン肉マン 宇宙一ゲーム超人コンテスト」というやり込みゲーム大会が開催された。日本全国を8地区に分け、クリアしたラウンド数とスコアを写真に撮って応募するもの。地区王者の8人には、賞品として黄金の「ゴールデンタッグカートリッジ」が贈られ、希望した超人がキャラクターとして加えられた(実際には、ゲーム中の登場キャラ1人と差し替え)という。
35年以上の月日が過ぎ、キン肉マンのストーリーのように全国に散らばった8つの黄金のカセットはオークションサイトなどに出品され、そのつど高額で取り引きされた。5月に黄金カートリッジが新たに出品され、レトロゲーム愛好家を大いにざわつかせる。出品者のツイッターによると、5月16日に「最低50万円で販売します」と告知。フリマアプリで95万円で落札され、同月17日に「メルカリで売れました」とつぶやいた。
「非売品ゲームソフトガイドブック」(三才ブックス)の著者で、非売品ゲームコレクターのじろのすけ氏は「過去に市場に出た際は70~100万円で取引されております。近年のレトロゲームの高額化を考慮すると、今回の金額は良心的な金額。むしろ、もしオークションで競り合いになれば、数百万円になってもおかしくないものだと考えます」とした上で「購入についてはかなり迷っていました。あと1日考える時間があったら、購入していたかもしれません」と振り返った。
キン肉マンのゴールドカートリッジが、100万円近くの値をつけたことに「ファミコンに愛着を持つ人が多いこと、ゴールドカートリッジというコレクターウケする形状、キン肉マンそのものの人気と知名度、配布本数の少なさなどから、レトロゲーム市場で極めて高額で取引されています」と説明する。
高額で取引されるがゆえに、偽物を造ろうとする者もおり「真贋の見極めが極めて難しい。何本(市場に)出たか断言することは困難です。現時点では、オロチ氏のブログ『ファミコンのネタ!!』の検証記事が最も参考になります」(じろのすけ氏)。95万円で落札された今回の一品について、ネット上では8本のうち5本目が確認されたとの声もある。
少なくとも3本、まだ存在が確認されていないお宝カセット。もしかしたら、あなたの周りに存在が忘れられているゴールドカートリッジがあるかも?