大手企業を辞めVtuber事務所起業、25歳が描く「kawaiiを世界に」

山本 鋼平 山本 鋼平
「kawaii」第1期メンバーの5人
「kawaii」第1期メンバーの5人

 日本発のカルチャーで世界を席巻する。4月28日から30日にかけ、新バーチャルユーチューバー(VTuber)プロダクション「kawaii」の1期生5人がYouTubeでデビューを果たした。5人の演者は英語圏に住み、活動の大半は英語だが日本語も話せる。同プロダクションを運営するLOYの代表取締役・木下恭佑氏さん(25)は「日本のVTuberはマンガ、アニメに続く魅力がある。OTAKU(おたく)のようにkawaii(カワイイ)を海外に浸透させたい」と意気込みを語った。

 アイラ・コールマン、シャーロット・スズ、ハナ・フローレス、天野寧々、レイナ・サン。個性あふれる5人が、デビュー動画では自己紹介、質疑応答に加え、ハナの森高千里「私がオバさんになっても」など、それぞれが日本語で熱唱した。木下さんは「自分の子供がデビューしたような気持ちになりました。本当にうれしかったですね。5人ともまだ硬さがありますが、どんどん本領を発揮してくれると思います」と感慨深げだった。ゲーム動画、チャットなど着々と活動の幅を広めている。

 活動の軸であるkawaiiを「萌え、だと思います」と語る木下さんは静岡出身で、幼い頃から教室に通うなど英会話が得意だった。明治大進学後は豪州シドニーに留学。明大を卒業し昨年4月、化粧品・日用品の外資メーカーP&Gに入社し、P&Gシンガポールで化粧品SK-Ⅱのマーケティング業務を担当した。世界各国の人々と接した経験を踏まえて、こう説明した。

 「英語には〝萌え〟を表す言葉がうまく見つかりません。海外では日本人女性はとても人気があります。奥ゆかしさや恥じらい、もじもじした様子を見て、海外の男性は『守ってあげたい』という気持ちになるようです。それが〝萌え〟のような気がします。海外の女性はストレートな感情表現が多くcuteやbeautifulとは異なる独特な魅力です。とはいえ、自分でも明確には説明できないのですが、それもまた魅力だと思います」

 P&Gでは語学力を生かして顧客と製品をつなぐグローバルなブランディング、キャンペーンを担った。しかし、コロナ禍のため業務は全てリモート。「会社の仕事にやりがいはありました。でも好きな海外に行くことができない中、人生で成し遂げたいことを考えた時、会社員では難しいと思いました。うぬぼれかも知れませんが仕事が順調だったことで自信がつき、起業への思いが一層強くなりました」。昨年11月に退社し、さまざまな起業プランを練った。

 マンガ、アニメに夢中だった2017年、世界初のVTuberで有名なキズナアイに出会った。マンガやアニメでは叶わない、キャラクターとの直接的な交流や24時間〝いつでも会える〟魅力に心酔した。自身の経験を踏まえ「海外ではマンガ、アニメは知られていてもVTuberは認知度が低い。市場の成長余地は大きいと思いますし、何より自分が好きなことをやりたかった」と昨年末、決意を固めた。大手プロダクション・ホロライブの英語圏進出など競争が激化してもkawaiiという軸に揺らぎはなかった。

 数字的な成果は満点ではないが2期生、3期生のデビュー計画は進行中と、先を見据えている。5人の萌えるポイントについては「アイラさんは王女様でツンデレちゃんです。シャーロットさんはロリですけどダンピール(吸血鬼と人間の混血)でキバがかわいい。ハナさんは奥ゆかしさと落ち着きがあって、歌が素晴らしいです。天野さんは幼なじみのしっかり者のようで少し抜けたところがあります。レイナさんは単純に明るくてあざとくて、同性に嫌われても男性にはモテます」と熱弁。照れくさそうに「普通なら少し引かれますよね」と笑った。

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