ユニクロのCM「オバハン下着編」で人気を集めた女優・辻イト子さんが24日にすい臓がんのため、大阪府内の病院で死去したことが26日、分かった。73歳だった。吉本興業が発表した。葬儀は近親者で行った。40代半ばで芸能界入りする異色の経歴で、50本を超えるCM出演や、テレビドラマで「大阪のおばちゃん」キャラを前面に活躍。夫婦漫才コンビとして、相方でもあった夫・マガル(74)がデイリースポーツの取材に対し、思いを語った。
取材に応じたマガルによると、イト子さんは昨年10月、すい臓がんが見つかり、闘病生活を開始。抗がん剤治療を続けたが、副作用で衰弱が激しく3カ月で中止。その後は自宅近くに転院し、亡くなる直前は自宅介護だった。「がんが見つかった時に本人も納得してね。私たちも心の準備はできていましたから」。マガルの口調は穏やかだった。
イト子さんは1947年、大阪府岸和田市生まれ。百貨店勤務を経て71年に結婚。その後はみかん農業に励み、87年に不動産会社を設立し、運営を手掛けた。94年、46歳で「人と違ったことをやってみよう」とタレント養成事務所に所属した。
人気となったユニクロのCMは、店頭で着ていた服を脱ぎだし、下着姿で「おばんくさいから替えて」と返品を要求する過激な作品。「ユニクロは理由を問わず返品交換します」という対応を表現するもので、その後、世界的企業となる同社の知名度を上げるとともに、イト子さん自身もブレークした。
近年は精力的に講演活動に励んでいたといい、知的障害を持つ娘の親としても「笑いあり、涙あり」(マガルさん)の話を届けた。「ユニクロが日本一になったのは、私が脱いだおかげや」が、講演の鉄板ネタでもあったという。
3月26日に大阪・岸和田市の福祉イベントに参加。これが最後の講演になった。「かなり衰弱した状態でしたけど、びっくりするくらい元気に話して、本人も喜んでいた」とマガル。「大体、講演の依頼は辻イト子の話なんですが、たまに最後の10分で夫婦漫才を頼まれるんです。それが思い出ですね」としみじみと話した。