『聲の形』の舞台もコロナ禍で大打撃 オリジナルアニメでのPRにも「新しい生活様式」の制約

山本 鋼平 山本 鋼平

 大ヒットしたアニメ映画『聲の形』(2016年)の舞台で知られる岐阜県大垣市は、オリジナル・アニメーションによる積極的なシティプロモーションを行っている。今年3月には約1年ぶりの新作、シリーズ第5弾となる「がきたびっ!あけちの故郷編」をYouTube等で配信を開始した。コロナ禍で大打撃を受けながらも、市の魅力を広めるため懸命に歩みを進めている。大垣市商工観光課の高木拓哉さんに話を聞いた。

 主人公あん(cv三森すずこ)が「最高においしいね」とバーベキューに舌鼓を打てば、あけち君(cv松岡禎丞)は明智光秀に関する諸説を説明する。島津豊久の墓、烏頭坂、城ケ平城跡、緑の村公園…アニメで描かれるのは自然や歴史、そしてレジャー。高木さんは「大垣市の上石津地域にフォーカスした作品になっており、自然豊かな美しい風景と文化財がテーマです。昨年のNHK大河『麒麟がくる』主人公の明智光秀の生誕地の一つとする説があり、それにつなんだキャラクター『あけち』が歴史スポットを紹介するシーンが見どころです」と語った。

 昨年はコロナ禍で観光業が大打撃を受けた。「大垣まつりをはじめとする市内イベント及びPR活動の大半が中止となりました。緊急事態宣言による移動の自粛のため、観光施設への入館が大幅に落ち込みました」と高木さん。令和元年(2019)年度に入込客数約37万人だった大垣まつりが中止となり、奥の細道むすびの地記念館の来館者は19万4296人から1万6178人に激減。同市出身の作家・中村航氏が原作を手がけ、佳村はるから人気声優が出演する今作についても「本来ならば声の収録に立ち会い、大垣市特有の方言をチェックするところをオンラインで行うなど、新しい生活様式にそった進め方を行うことに苦慮しました」と、制約を強いられた。

 アニメによるシティプロモーションは18年4月にスタート。「多くの人々にアニメーションを視聴していただくことができ、大いに市の知名度向上につながったと考えています」と手応えを得ている。観光協会会報誌の表紙での起用や、西濃地域の観光拠点施設・奥の細道むすびの地記念館に等身大キャラクターパネルが設置されるなど、アニメにとどまらない活用が行われている。大垣市交流人口では平成29(2017)年度が約287万人、平成30(2018)年度が約309万人、令和元年度が約290万人。一概にシティプロモーションが数字に表れる、直接的な影響を及ぼすとは当然言えないが、従来のPR方法にないメディア露出を可能にしたことは間違いない。

 今後について高木さんは「魅力ある大垣の観光資源を全国に伝えていくことが目標です」と意気込みを口にした。その上で「市民の皆様にも自分のまちの魅力をあらためて認識していただけるよう努めてまいります」と語った。今年4月に岐阜県独自の緊急事態宣言が発令され、飲食店や公共施設などの利用に制限がかけられたまま。「活気が戻ったとはとても言えない」状況は続いている。それでも、シティプロモーションは観光客誘致だけではなく、地域の住民に還元される側面がある。コロナ禍の中でも、地元の魅力を再認識させる意義は変わらない。

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