あの「いっき」大阪・新世界のゲーセンでまだ稼働中!まさかの売上絶好調に「クソゲーじゃない」

杉田 康人 杉田 康人

大阪市の繁華街・新世界周辺のゲームセンターで、昭和から平成初期のアーケード(業務用)ゲームが稼働中だ。学校帰りのゲーセンや駄菓子屋の店先で、男子を熱くさせたゲームが続々集結中。40代オーバーになったオッサンたちを、店内にホイホイ吸い寄せている。

通天閣近くの「レトロゲーセンザリガニ」では、車状の筐体が動く「アウトラン」(セガ)や、体感ゲームの「スペースハリアー」(同)などレアなゲームが140台以上稼働中。最近では、座席が前後左右に動く「アフターバーナー2 ダブルクレイドル」(同)3機が一気に導入された。

2016年12月にオープンした同店は、オーナーの父親が筐体や基板を自分で購入するほどのゲーム好きだった。早世した父親の思いに応えるため、オーナーが空店舗にゲームを置いたことが開店のきっかけになった。閉園した遊園地のゲームコーナーから、レトロゲームやエレメカと呼ばれるアナログなゲーム機を引き取ることもあり、さながら「ゲーム博物館」の様相を呈している。

「ザリガニ」の中でも、さらに異彩を放つのが〝国宝セット〟と銘打たれ置かれているアーケード版「いっき」(85年、サン電子)だ。文字通り農民一揆をテーマにしたアクションゲームで、ファミコン版でもヒット…いや、白いカセットとともに、幼い頃の黒歴史として記憶されている人も多いだろう。

悪代官にたてつく農民の主人公・権べと田吾を操作し、武器の鎌で敵の忍者を倒しながら小判を拾っていくゲームは「一揆なのにひとり?」「一揆なのに、小判を取るステージが永遠とループする」「なぜ敵が忍者なのか…」というツッコミを当時から呼んだ。

ランダムで登場する代官を捕まえたらステージクリア(その時点で一揆終了では?)。上位互換アイテムの竹やりが鎌に比べてまったく使えない、腰元に抱きつかれると動けない…というおバカな設定は、イラストレーターのみうらじゅん氏が「クソゲー」という言葉を生み出す契機になったと言われている。

「いっきはクソゲーじゃないですよ」と語ってくれたのは、前出のゲーセン「ザリガニ」のスタッフ・中川アキラさんだ。アーケード版「いっき」発売から36年が経ったいま、日本全国のゲーセンで稼働するのはでここだけでは…と推察する。

今ではお宝になった「いっき」の基板。オーナーの父親が所有していたコレクションのひとつだったという。「あの時代を知る人からは『まだあったのか!』と喜ばれますし、若い人にとっては新鮮でめずらしいのか『こんなゲームあるんですか!』と驚かれます。一揆をテーマにしたゲームなんてもう出てこないでしょうし、けっこう人気です」と意外な反応を教えてくれた。

インカム(売上)も好調だという。多くのレトロゲームを見守る中川さんは「インカム的にもクソゲーじゃないです。当時はクソだったかもしれませんし、ゲーム自体もクソかもしれませんけど…。当時と今では価値が変わってくる。名作だと思います」と熱く語る。

駄菓子屋の店先でおなじみだったアップライト筐体で残る「いっき」。記者もさっそくプレーしてみた。80年代の子どもにとって100円は大金。20~50円だった駄菓子屋のゲームに、いつも群がっていた。大人になった今、あの頃やりたかったゲームが好きなだけ!と思ったのもつかの間、腰元に抱きつかれ、忍者の手裏剣にやられ…。100円玉はみるみる減っていくのだった。

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