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進化する直腸がん治療 「治す」と「生活の質」両立する時代へ ロボット支援手術や術前治療の進歩

悠々〜ライフ

谷光 利昭 谷光 利昭
画像はイメージ(DailyStock/stock.adobe.com)
画像はイメージ(DailyStock/stock.adobe.com)

 直腸癌(がん)の治療は、この20年で大きく進歩しました

 診断は内視鏡検査で病変を確認し、組織検査で確定します。その後、CTやMRIを用いて、がんの深達度やリンパ節転移、他臓器への転移の有無を詳しく調べ、最適な治療方針を決定します。

 早期癌では内視鏡治療で完治することもありますが、進行癌では手術が中心となります。現在は腹腔鏡手術やロボット支援手術が普及し、傷が小さく、出血が少なく、回復も早くなりました。また、術前に抗がん剤や放射線治療を組み合わせることで腫瘍を縮小させ、根治性を高める治療も広く行われています。

 さらに一部の患者さんでは、術前治療で癌が完全に消失したと判断されれば、厳重な経過観察のもとで手術を行わない「Watch and Wait」という治療戦略が選択されることもあります。ただし、私の知る限りでは、日本においてこの治療法は普及していませんが、高齢化社会にともない増えてくるのではないかと予想します。

 直腸は骨盤の奥深くにあり、排尿や性機能をつかさどる自律神経が非常に近くを走っています。そのため、手術では神経をできるだけ温存するよう細心の注意を払いますが、癌の広がりによっては神経を切除せざるを得ないこともあります。

 また、部位、癌の進展具合により永久的人工肛門、一時的人工肛門になる場合があります。以前と比較すると永久的人工肛門は減少しました。一時的人工肛門は、手術でつなぎ合わせた吻合(ふんごう)部が完全につながったことを確認してから腹腔内に落とし込む手術を二期的に行います。

 術後には、排尿障害や排便機能の変化がみられることがあります。また、男性では勃起機能障害や逆行性射精、射精障害などの性機能障害が起こることがあり、女性でも性交時の痛みや性的満足度の低下を経験されることがあります。これらは命に関わる合併症ではありませんが、患者さんの生活の質に大きく影響するため、治療前から十分な説明を受けることが大切です。

 現在では、自律神経温存手術の技術向上やロボット支援手術の発展により、これらの合併症は以前より減少しています。しかし、最も重要なのは、機能温存を優先するあまり根治性を損なってはならないということです。癌を確実に治すことを第一に考え、可能な限り神経や肛門機能を温存することが、現代の直腸癌治療の基本理念です。

 直腸癌の治療は決して一つの方法ではありません。患者さん一人ひとりの病状や人生設計に合わせて最適な治療法を選択することが、最良の結果につながると考えています。不安や疑問があれば遠慮なく専門医に相談し、十分に納得した上で治療を受けていただきたいと思います。

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