既存の抗うつ薬が効かない「難治性うつ病」に対し、ヒキガエル毒由来の合成成分を含んだ点鼻スプレーが劇的な効果を示した。キングス・カレッジ・ロンドンなどの研究チームが実施した臨床試験で明らかになった。
用いられたのは、コロラドリバーヒキガエルの分泌物に由来する幻覚成分「5―MeO―DMT」の合成化合物だ。一般的な幻覚剤と異なり、投与から数分で強力に作用したのち約30分で効果が薄れるため、患者を長時間の監視下に置く必要がなく、臨床現場での実用化に適しているという。
既存の薬を複数試しても改善しなかった18〜75歳の患者約200人を対象とした第2相試験では、8ミリグラムまたは12ミリグラムの単回点鼻投与を実施。その結果、投与翌日から症状の劇的な改善が見られ、効果は数週間にわたり持続した。
また、投与から1カ月後の寛解率は偽薬群の8%に対して、実薬群では18〜26%に達し、約3人に1人の症状スコアが半減以下まで低下した。参加者の85%が投与から2時間以内に帰宅でき、副作用も軽度の吐き気や一時的な不安程度にとどまった。
うつ病患者の約3割が従来の薬で効果を得られないなか、研究チームは「持続的な抗うつ効果を得るために、長時間に及ぶ幻覚作用は必ずしも必要ではない」と結論付けている。
なお、本製剤はまだ実験段階であり、実用化に向けた検証が続けられている。また「ヒキガエル毒」という通称が付いているものの、実際にヒキガエルの分泌物を使用しているわけではなく、成分を人工的に再現した合成化合物が用いられている。