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「仮面ライダー」のヒーローが告白 偉大な兄への「違和感」と「重荷からの解放」…「たい焼き」修業も体験

北村 泰介 北村 泰介
1973年放送の特撮ドラマ「ロボット刑事」で三つ揃いのスーツにネクタイで決めた千葉治郎©石森プロ・東映
1973年放送の特撮ドラマ「ロボット刑事」で三つ揃いのスーツにネクタイで決めた千葉治郎©石森プロ・東映

 1971年にスタートした特撮ドラマ「仮面ライダー」で生身のヒーローとして⼈気を博し、今年で喜寿を迎えた元俳優が初の著書「千葉治郎 変身しなかった男の物語」(立東舎)を世に出した。特撮ドラマや数々の映画で好演した千葉治郎が本名の「前⽥満穂」名義で、生い立ちから俳優時代、引退後に実業家として国際的なスター俳優で10歳上の兄・千葉真一(2021年死去、享年82、本名・前田禎穂)を支え、その後、故郷にUターンして“木こり”として働いた日々や近況をつづった半生記だ。その中でも注目される「兄貴」への思いを聞いた。(文中敬称略)

 明治生まれの両親の元、千葉・君津で生まれ育った。戦前、戦闘機のテストパイロットだった父は高収入だったが、敗戦によって生活が困窮。治郎は地元の小学校を卒業後、東映で俳優デビューした真一の元に下宿して都内の中学、高校に通い、卒業後は兄の勧めで文学座の研究所で演技を学んでから東映入り。フジテレビ系ドラマ「ブラックチェンバー」(69年)でデビューした際、原作者の作家・生島治郎から「志田英二」という芸名をもらったが、周囲の意向で「千葉真一の弟」として「千葉治郎」になった。

 「(ジローの字は)生島先生の『治郎』をいただいたんですけど、先生には失礼したと思います。何も分からない中で、周りが決めていくんですね。まだ20歳の子どもだったですから」。“兄の七光り”とささやかれながらも役に恵まれる現実がある一方、それを重荷にも感じた。76年公開の主演映画「ラグビー野郎」で主人公の名である矢吹二朗に改名。「ささやかな抵抗」だった。

 82年に俳優業を引退し、裏方として兄の会社経営をサポート。その前段階の修業として「たい焼き」にも挑んだ。「ある社長さんと友だちになって、『経営ってどんなものか教えて欲しい』とお願いしたら、『たい焼き、焼いてみな』と。軽トラックに材料を積んでスーパーの近くでやってみると、これが面白いんですよ。時間とお客さんの入りを見ながら、どれくらいの粉を溶かして、余らないようにどう作っていくか、そして、お客さんを待たせないように…と考えながら焼いていくんですけど、結構、売りましたね。1つ60円で、1日に5~6万円は売り上げました。勉強になりました。お客さんには『なんで(俳優の)あなたがここで焼いてるの?』って驚かれましたけど(笑)」

 その後、アパレル業界にも進出。東京・青山の有名ブランドと組み、兄が主宰するJAC(ジャパン・アクション・クラブ)からスターとなった俳優・真田広之らの人気を背景に「JACブラザーズ」のトレーナーが大ヒットした。

 「小さい店だったんですけど、初日のオープンに2000人が並び、年間2億円も売りました。兄貴からは売り上げのために『品質を落とさないとダメだ』と言われたんですけど、提携したブランドの社長さんとは『品質を守る』という約束があり、かなり悩みながらやっていました。親父の羽振りのいい時代に生まれた兄貴と、貧しい生活になってから生まれた私とでは金銭感覚が違っていたのだと思います。そして、兄貴は周りに集まってくる人たちにだまされているな…と思うことも結構ありました。大金を持っていかれたり、いろんな事があって、私が尻拭いをしているうちに、もう『いらない』ということになって退職。千葉に帰って木こりになるわけです」

 互いに連絡をほぼ断ったまま、兄は5年前に死去。たもとを分かっても、兄弟として根の部分でつながる“大樹”のような存在がいなくなったことは、半生記を初めて記す背景にあった。

 治郎は「子どもの頃から兄貴に世話になったというか、依存していた部分があって、親代わりでやってもらったという恩は拭いきれないというのは大人になってもずっと付きまとっていました。それで兄貴には逆らえない一方で、『千葉真一の弟』と言われることへの違和感もあった。そういう意味で、中途半端でしたし、それは自分の問題です。ただ、そういう重荷から“解放”された…みたいな思いがあったのは確かです」と言葉を絞り出した。

 著書では兄について「〝華〞があった。とにかく絵になる。画面の中心に立ったときの説得力は特別です。現場の空気を作り、人を集めて、作品全体を動かしていく牽引力、プロデュース能力にも長けていた。そんな兄貴の背中をいちばん近くで見られたことは、役者として大きな財産になったことは間違いありません」とつづった。リスペクトを込めながら、取材では“コインの裏表”である複雑な関係を吐露。「千葉治郎」(前⽥満穂)という男の誠実さが伝わった。

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