60代のAさんは、毎年お盆や彼岸になると、遠方にある実家のお墓へ足を運んでいた。しかし年齢を重ねるにつれ、長距離の移動に加え、草むしりや墓石の掃除も負担に感じるようになった。
そんなとき、インターネットで見つけたのが「お墓参り代行サービス」だ。本人に代わって墓石の清掃や草むしり、供花などを行うサービスで、作業前後のお墓を写真で報告してくれる事業者もある。
これを見たAさんは「これならお願いしてもいいかもしれない」と思う一方で、「墓参りまで他人に任せていいのだろうか。ご先祖様に失礼ではないだろうか」と、心の中で抵抗を感じた。では実際に、お墓参りは自分や家族が足を運んでこそ意味があるのだろうか。墓石の建立や修繕、墓じまいなどに携わる石材店代表の林孝光さんに聞いた。
墓参りは無理なく続けられる形が大切
―お墓参りを代行業者に任せることを、どう受け止めればよいですか。
自分で行けない事情があるのなら、人の手を借りることを後ろめたく感じる必要はありません。
お墓は時間がたてば草が伸び、汚れも付きます。そのままにしておくと、管理が難しくなることもあります。行けないから何もしないのではなく、代行を利用してきれいな状態を保つ。それも、お墓を大切にする一つの方法だと考えています。
―「自分で行かなければ、ご先祖様に申し訳ない」と罪悪感を抱く人もいます。
そう感じるのは、それだけご先祖様やお墓を気にかけている証しだと思います。
行きたい気持ちがあっても、年齢や体調、距離などの事情で難しいことはあります。無理をしてまで自分で行かなければと考えるのではなく、自分にできる形でお墓と向き合うことが大切です。
―墓参り代行を利用する際、事業者選びで注意する点を教えてください。
まず、どこまで作業してくれるのか、料金に何が含まれているのかを確認しておくことです。
墓石は石の種類や汚れの状態によって、適した洗剤や道具が異なります。清掃の方法によっては墓石を傷めることもあるため、墓石を扱った実績があるかどうかも確かめておくと安心です。
作業前後の写真を送ってもらえるかも確認しておけば、離れた場所からでもお墓の状態を把握できます。
―今後、お墓参りや供養の形はどのように変わっていくと考えますか。
家族が遠方で暮らしていたり、お墓を継ぐ人がいなかったりするケースは、これからも増えていくと考えられます。
墓参り代行だけでなく、墓じまいや永代供養など、お墓との向き合い方にはさまざまな選択肢があります。「こうしなければならない」と決めつけず、家族で話し合い、それぞれが無理なく続けられる方法を選んでいくことが大切です。
◆林孝光(はやし・たかみつ) 有限会社林石材店 代表
昭和14年創業、愛知県豊田市陣中町にある有限会社林石材店の3代目。墓石の建立や修繕、墓じまいなど、お墓に関する幅広い相談に応じている。墓じまいでは、墓石の撤去だけでなく、遺骨の確認や新しい納骨先への移動まで、遺族の気持ちに寄り添うことを信条としている。地域に根差した丁寧な仕事を続け、地元の人々からの信頼も厚い。