出張先へ向かうAさんは、新幹線の車内で座席前のテーブルにパソコンを置き作業をしていた。そこへ、前の乗客が突然リクライニングシートを大きく倒してきたため、ディスプレイが座席の曲がり角に当たり、破損してしまう。
Aさんは「座席を倒す前に一声かけてもらえていれば防げたのではないか」と、相手に賠償を求めた。しかし相手は応じてくれず、車掌を呼ぶ事態に。口論も収まらないまま降車時間を迎え、納得できない気持ちを抱えたまま、その場を後にすることになった。
では実際に、新幹線の座席を倒すとき、後ろの乗客に声をかけるべきなのだろうか。また、後ろでパソコンなどを使用する場合、前の乗客の行動を想定しておく必要はあるのだろうか。マナー講師の松原奈緒美さんに聞いた。
座席を倒す側もPCを使う側も配慮が必要
ー新幹線などで座席をリクライニングする際、後ろの人に声をかけるのがマナーなのでしょうか?
リクライニングは座席に備わっている機能なので、倒すこと自体はマナー違反ではありません。また、後ろの方に必ず許可を取らなければならないという決まりもありません。
ただし、シートを倒すことで後ろの方にどのような影響があるかを考えることはマナーといえます。
ー後ろの人がパソコンやタブレットなどを使用している場合、リクライニングする側にはどのような配慮が求められますか?逆に、パソコンなどを使う側が気をつけるべきことはありますか?
リクライニングする側は後ろの方がパソコンなどを使用していたら、「少し座席を倒してもよろしいですか」などと一言伝え、相手が対応してから倒すようにしましょう。加えて、倒す角度もご迷惑にならない範囲にしたいものです。
パソコンを使用する側も、前の座席がリクライニングすることを想定しておくとよいでしょう。
ー「リクライニングしたことでパソコンが壊れた」といったトラブルを避けるために、乗客ができる対策はありますか?
双方が配慮することが大切です。リクライニングする側は「後ろを見る・状況により一声かける・ゆっくり倒す」の3点を意識しましょう。パソコンを使用する側も前の座席が動いたときにすぐ対応できるよう、画面や本体の位置に注意しておきましょう。
双方が少し先を予測して行動することが、トラブル防止につながります。
ー新幹線の座席をめぐるトラブルが起きた場合、どのように対応するのが望ましいでしょうか?
その場で感情的に相手を責めないことが大切です。どちらかが一方的に責任を求めようとすると、トラブルが大きくなってしまいます。
まずは状況を確認し「パソコンが座席に挟まれてしまったようです」「座席を倒した際に当たってしまったようです」など、事実を落ち着いて伝えるようにしましょう。
万が一、話がこじれそうな場合には、周囲のお客様にご迷惑をおかけする場合もありますので、無理に結論を出そうとせず乗務員などに相談することをおすすめします。
◆松原奈緒美(まつばら・なおみ) マナー講師
株式会社EXSIA代表取締役。NPO法人日本サービスマナー協会ゼネラルマネージャー講師。著書『新しい生活様式・働き方対応ビジネスマナー100』新日本法規出版、『信頼される人がやっているビジネス基本のふるまい事典』かんき出版。