懲戒処分を受け、会社から一定期間の停職(出勤停止)を言い渡された会社員。「出社禁止で仕事もないし暇だから」と羽を伸ばし、旅行先の写真をSNSに投稿した。するとこれが会社に見つかってしまい大問題に…。
これに対して「給料も出ない休みの期間中なのだから自由なはず」と主張したくなるが、会社からの処分や指導に不服を申し立てることはできるのか。停職・出勤停止中の正しい過ごし方や、会社からの指示の限界、追加処分のリスクについて、社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いた。
ー停職(出勤停止)期間中、会社が自宅待機や外出制限を強制できますか?
会社には原則として外出制限を命じる権限はありません。移動の自由は憲法で保障された権利であり、証拠隠滅の恐れがある会計不祥事など特殊なケースを除き、合理的な理由のない外出禁止指示は無効です。
会社が就業規則等で命令できるのは、あくまで「会社に出勤してはならない(出勤停止)」という範囲にとどまります。自宅待機という名目であっても、家の中に閉じ込めるような強制拘束は法律上認められないのが原則です。
ー停職中に旅行へ行ったりお酒を飲んだりする行為自体は問題ないですか?
原則として問題ありません。病気休職のように「療養に専念する義務」がある場合とは異なり、懲戒処分による出勤停止期間中の旅行やお酒自体を会社が直接禁止することは不可能です。
出勤停止は無給となり反省を促す重い処分ですが、反省の仕方まで会社が直接指定・監視できるわけではありません。少し環境を変えて自分を振り返るための外出や旅行自体は個人の自由であり、それだけで直ちに違法や就業規則違反とされることはありません。
ー旅行の写真をSNSに投稿した場合、「反省がない」として追加の懲戒処分になりますか?
追加の懲戒処分を受ける可能性があります。プライベートな旅行自体は自由であっても、それをSNSで不特定多数に向けて発信する行為は別問題です。不祥事や処分が社外にも周知されている場合、能天気な投稿が拡散されれば「処分が軽すぎる」「反省していない」と批判され、会社の品位や信用を傷つける恐れがあります。
多くの就業規則にある「会社の品位や名誉を傷つけた」という規定に該当し、再度の処分につながるリスクが高いです。
ーSNSで「自分は無実だ」「会社が悪い」などと投稿した場合はどうなりますか?
さらなる処分を受ける可能性があります。SNS上で「自分は無実だ」「処分は不当だ」などと投稿する行為は、会社の信用や名誉を著しく損なうため重大な就業規則違反となります。
処分に不服があるなら、SNSで発信するのではなく社内の弁明手続きや裁判を通じて主張すべきです。また、出勤停止は処分保留であることも多く、反省せずに反論を投稿することは、停職明けの更なる処分の決定打となってしまいます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ) 社会保険労務士/こころ社労士事務所代表
大阪府茨木市から労使の共存共栄を目指す職場づくりを支援。人材育成・定着のための就業規則整備や評価制度構築、障害者雇用、同一労働同一賃金への対応といった実務支援は、常に現場の視点に立つ。ネットニュース監修や講演にて情報発信を行う一方で、SNSでは「#ラーメン社労士」としても活動し、親しみやすい人柄で信頼を得ている。