ある日、Aさんは買い物に行こうと車に乗り込み、制限速度50kmの1車線道路を走っていた。すると前を走る車が時速30kmほどで走行していたため、クラクションを鳴らして対向車線にはみ出しながら追い越そうとする。
ところがAさんが追い越しを始めたところ、前の車が突然速度を上げて追い越しを妨げるような動きを見せた。これによってAさんは、元の車線に戻るタイミングをつかめないまま対向車線を走り続け、危うく対向車と衝突しそうになり「事故になるところだった」と、ひや汗をかいた。
追い越される側の車が速度を上げ、追い越しを妨害する行為は道路交通法上問題にならないのだろうか。また、そもそも前の車が遅いからといって、後続車がクラクションなどでプレッシャーをかけるのも違反とならないのだろうか。
いわゆる「逆あおり運転」をめぐるトラブルについて、元警察官やまよしさんに話を聞いた。
追い越しを妨害するための加速はNG
―追い越されそうになった車が、追い越しを妨害するよう速度を上げる行為は、道路交通法上問題になるのでしょうか?
道路交通法27条では、後続車に追いつかれた場合、追い越しが終わるまで速度を上げてはならないと定められています。追い越されそうになった車が、追い越しを妨害する目的で速度を上げることは、道路交通法違反にあたります。
ただし、道路の状況や双方の運転方法によって判断は異なります。
―前の車が制限速度より遅く走っている場合、後続車はどのように対応するのが正しいのでしょうか?
まずは、十分な車間距離を取って走行することが大切です。追い越す時も、対向車や道路の状況を確認し、安全に追い越せる状態になってから行うようにしてください。
「遅いから追い越したい」という理由だけで、無理やり対向車線に出るのは非常に危険です。大きな事故やトラブルにつながる可能性があります。
―後方者がクラクションを鳴らしたり、車間距離を詰めたりしてプレッシャーをかける行為にも問題はありますか?
プレッシャーを与えるためにクラクションを鳴らすことは、適切な使用法とはいえません。道路交通法54条では、必要がある場合を除き、警音器を鳴らしてはならないと定められています。
前の車との車間距離を必要以上に詰めることもやめるべきです。状況によっては、車間距離不保持違反となります。
―「逆あおり運転」という言葉は法律上どのように考えればよいのでしょうか。また、事故にならなくても警察に相談できるケースはありますか
「逆あおり運転」は、前方の車が極端に速度を落としたり、追い越そうとする車を妨害したりする行為に対して使われる言葉です。速度が遅い車すべてが「逆あおり運転」に該当するわけではありません。
急ブレーキや車間距離不保持など、他の車両の通行を妨害する目的で違反行為を行えば「妨害運転」として違法になります。
また、事故が起きていなくても危険な運転をされた場合、警察に相談は可能です。ドライブレコーダーのほかにも、車両の特徴や発生した場所などをメモしておくと、相談する際に役立ちます。
―このようなトラブルに遭遇した場合、ドライバーはどのように対応するのが安全なのでしょうか
相手に対抗しないことが最も重要です。加速されたからといって、こちらも加速して追い越そうとしてはいけません。さらに大きなトラブルに発展する可能性もあります。相手の車を追いかけたり、直接話しかけたりするのもやめてください。
感情に任せて行動するのではなく、冷静な判断で対処するようにしましょう。
◆やまよし 元警察官
交番や刑事課などでの勤務経験を持ち、現在は警察官採用試験対策のサポートを行う。独学で警察官採用試験にひとケタ順位で合格した経験を生かし、全国の警察官採用試験合格者を輩出している。
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