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「女ねずみ小僧」で愛用したピンクの口紅の舞台裏…小川真由美さんを「姉御」と慕ったウルトラ女優が悼む

北村 泰介 北村 泰介
女優として数々の作品で存在感を発揮した小川真由美さん(1985年9月撮影)
女優として数々の作品で存在感を発揮した小川真由美さん(1985年9月撮影)

 昭和のテレビドラマや映画に足跡を残した女優の小川真由美さんが今年3月に86歳で死去していたことが9日に報じられた。代表作「浮世絵 女ねずみ小僧」(フジテレビ系、1971年放送の第1シリーズ)で共演し、「ウルトラマン」(TBS系、66~67年放送)のフジ・アキコ隊員役などで知られる女優の桜井浩子(80)がよろず~ニュースの取材に対し、「姉御(あねご)」と呼んで慕った小川さんの思い出を語った。(文中一部敬称略)

 同作の舞台は江戸の元禄時代。小川さんは常盤津(浄瑠璃の三味線奏者)の師匠にして、夜は義賊・女ねずみ小僧となる「お京」が当たり役となった。その手下「小ねずみ」軍団の一員を演じた桜井は「お京は本当に浮世絵から抜け出してきたみたいに、きれいでした。何も足さない、何も引かない、そのままの美しさ。(大女優の)高峰秀子さんや杉村(春子)先生とも違う。新しいタイプ…なんて私が言うのも失礼ですけど、それまでにない女優さんでした」と評した。

 さらに、桜井は「姉御は私を役名にちなんで『お千代ちゃん』と呼びました。私たち小ねずみ3人で当時はやっていたピンクの口紅をつけていたら、姉御に『お千代ちゃん、あの口紅、誰の?』と聞かれ、『私のです』と答えると、『ど~れ、見せて』と言うのでお見せしたら、持って行っちゃって、それから、ずーっと自分で使ってた(笑)。面白い人でした」とエピソードを披露した。

 現場は東京・調布の日活撮影所だった。

 「調布の駅で姉御に会うと、タクシー乗り場で『お千代ちゃん、いいよ、乗っけてあげるから』と誘っていただき、車中で『あのシーンはね…』とか、いろんなことを話してくださった。撮影で覚えているのは負傷者を介抱するシーン。私が手ぬぐいを相手の傷口に巻くところで、姉御は『お千代ちゃん、違うよ、それ。手ぬぐいの端をこうやって切っておいて、パッと持ったら、こうやってビリッと破って、パッと巻くんだよ』と実演してくれて、その通りにやったら、監督に褒められました。そういうのをサラッと教えくれる。普通、女優さんは教えてくれないですからね。俳優同士、敵ですから(笑)。私は“敵”って思われなかったのかもしれないですけど」

 桜井は61年に東宝入社。TBS系の特撮ドラマ「ウルトラQ」(66年放送)と「ウルトラマン」のヒロインとなり、東宝退社後は小劇場運動の先駆けとなった劇団「六月劇場」に所属。岸田森(しん)や草野大悟といった名優と舞台にも立ち、小川さんも“同志”的な存在だった。

 「姉御はお二人を『シン、ダイゴ』と呼び、『その芝居、違うんじゃないの?』と言える間柄。『女ねずみ小僧』でも共演しました。ちなみに、六月劇場で見習いとして岸田森さんに付いていたのが松田優作さん。森さん、優作さんは俳優としてその場にいながら、また別の自分が俯瞰(ふかん)して全体を見ているという冷めた目があって、姉御もそうでした。(男ねずみ役の)田中邦衛さんとアドリブをギリギリきわどいところまでやられて面白かったのですが、よほど自分を俯瞰して見ている人じゃないと、あそこまでやれないなと」

 続く現場は東映京都撮影所。テレビ朝日系の連続ドラマ「赤穂浪士」(79年放送)だった。

 「萬屋錦之介さんが大石内蔵助役をされたドラマで、内蔵助が色遊びをしている時の『太夫』を小川さんが演じました。私は姉御のお付きとして1週ほどずっと一緒にいましたが、後から聞くと、姉御の希望だったと。スポンサーさんの接待があった翌日、遅い時間に来た小川さんに『姉御、どうしたんですか?飲み過ぎたんですか?』って聞いたら、『昨日、スッポン食べちゃったのよ。それで元気になっちゃってさ』って言うから、『元気になったから寝過ごすんですか?』とツッコむと、『うるさいわね!』って(笑)」

 桜井は「お付きの人に『アレ買って来て』とか、一切、頼み事をしない人。全部自分でやる。私が『どうしますか?』と聞いても、『いいよ、私がやるから。(お茶の)いれ方も気にいらないから私がいれる」って(笑)、そういう感じの人でした」と付け加えた。

 親密になっても公私を分けた。結果的に、この現場が最後になった。

 「さっぱりしてるんですよ。『お千代ちゃん、終わりね。(縁があったら)また会おうね』。それだけです。ベタベタしない。プライベートに入ってきたり、人を何かに使うとか、そういうところは一切ない。スカッとしてましたね。ダメなことはダメ。甘えない。いろんなことを教えてもらった。新劇出身の女優さんは主役をやっても、その後は脇にいく人が多いと思うのですが、姉御はずっと真ん中にいた。それが小川真由美という女優のポリシーだったんじゃないかと思います」

 短くても濃密だった「姉御」との日々を胸に、桜井は感慨を込めた。

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