フリマアプリで欲しかった陶器の置物を購入したAさんは、「割れ物注意」の指定をおこない、到着を楽しみに待っていた。しかし届いた箱を開けると、中身の置物に大きくひびが入っているのだった。
すぐに配送業者に連絡したが、返ってきたのは「梱包が不十分だったため、当社の責任ではありません」という冷ややかな言葉。出品者に相談しても「発送時は無事だった」の一点張りで、Aさんは落ち込んでしまう。
こうした配送中の破損トラブルにおいて、責任の所在はどこにあるのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー「割れ物注意」の指定をしていた場合でも、配送業者が責任を免れるケースはあるのでしょうか?
「割れ物注意」のステッカーは、あくまで現場の作業員に対する「注意喚起」であり、それだけで業者の過失を100%確定させる法的根拠にはなりません。商法や標準宅配便運送約款では、荷物の欠陥や「梱包の不備」による破損については、配送業者は責任を負わないと定められています。
つまり、誰がどう見ても梱包が不十分、例えば緩衝材が全くなく、薄い紙袋にガラス細工をそのまま入れただけといった状態であれば、業者の免責が認められてしまう可能性が高いのです。
ー配送業者から「梱包不備」を理由に補償を拒否された場合、どう反論すべきですか?
外箱である段ボールそのものに異常があったかどうかがポイントです。たとえ梱包が多少甘かったとしても、外箱が潰れていたり、大きな凹みや破れがあったりすれば、それは配送中に「許容範囲を超える強い衝撃」や「不適切な荷扱い」があった客観的な証拠になります。
梱包の良し悪しを議論する前に、これほど箱を変形させるほどの衝撃を与えたこと自体が業者側の過失ではないか、と外箱の損傷を起点に主張を組み立てるのが有効でしょう。
ー「フリマアプリの補償」と「配送業者への直接請求」、どちらを利用するのが良いのでしょうか?
まずはフリマアプリの事務局を通じた補償交渉を優先すべきです。メルカリの「メルカリ便」やラクマの「かんたんラクマパック」といった提携配送を利用している場合、アプリ側が配送業者との間に入り、状況に応じて購入者と出品者の双方を補償してくれる仕組みがあります。
個人が配送業者と直接対峙し、法的な理屈で渡り合うのは精神的にも知識的にもハードルが高いため、まずはアプリ内の専用フォームから詳細な状況を添えて報告を行いましょう。
ー泣き寝入りを防ぐために真っ先に撮るべき「証拠」を教えてください。
開封して異変に気づいたら、中身を完全に取り出す前に、まずは外箱の全景をあらゆる角度から撮影し、凹みや汚れがないか記録してください。
次に配送伝票や「割れ物注意」のシールがはっきりと判別できる写真、そして箱を開けた直後の内部の梱包状態、具体的には緩衝材がどのように入っていたかがわかる写真を撮ります。
最後に、品物のどの部分がどう壊れているかのアップ写真を残しましょう。これらの写真は、アプリ事務局や業者に過失を認めさせるための武器になります。
不測の事態に気づいたら、まずはスマホを手に取り、冷静に現状をありのまま記録することが大切です。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。