週末、自分へのご褒美に少し高めのレストランを訪れたAさんは、メニューに載っていた「溢れんばかりの肉厚ステーキ」の写真に惹かれて注文。しかし、運ばれてきたのは、皿の上が寂しく見えるほどペラペラの薄い肉と、申し訳程度に添えられたスカスカの野菜。これを見てAさんは「騙された…」と溜息をつくのだった。
こうしたメニュー写真と実物の激しいギャップは、法的に見て「詐欺」や「優良誤認」ではないのだろうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ーメニュー写真と実物が違う場合、法的な詐欺として訴えることは可能ですか?
刑法上の「詐欺罪」として立件するのは困難でしょう。詐欺罪が成立するには、店側に最初から客を騙してお金を奪う意図(不法領得の意思)があったことを証明しなければなりません。
飲食店の場合、「調理の過程で肉が縮んだ」「盛り付けの個体差だ」といった言い訳が成立しやすいため、警察が動くような事件になることは稀です。
ー料理が届いた後、返品や返金を求めることはできますか?
法的には、写真と実物の間に「社会通念上、許容できないほどの著しい差異」があれば、契約の解除(返品)や代金の減額を求める権利があります。例えば、肉のグラム数が半分以下だったり、メインの食材が入っていなかったりする場合です。
しかし、ステーキの「厚み」や「見た目の美しさ」は主観に左右される部分も大きく、一口でも食べてしまうと「承諾した」とみなされることが多いため、箸をつける前に店員を呼び、その場で「写真と著しく違うのでキャンセルしたい」と交渉するのが鉄則です。
ー景品表示法の「優良誤認」として店が処罰されるボーダーラインはどこにありますか?
景品表示法における「優良誤認」とは、実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示を指します。「写真はイメージです」という注釈があれば何でも許されるわけではありません。
その注釈を考慮しても、一般消費者が「この写真通りのものが出てくる」と期待するのが当然の状況で、それとはかけ離れた劣悪なものを提供していれば、消費者庁から措置命令や課徴金の対象となる可能性があります。特に、過度な写真修正や、撮影用に全く別物の食材を使っている場合はアウトです。
ーこうしたトラブルを防ぐために、注文時に店員さんに確認すべきことはありますか?
「客観的な数値」を確認するのが効果的です。「このお肉は何グラムくらいありますか?」や「(写真の野菜を指差して)これも全部付いていますか?」といった聞き方です。
あらかじめ具体的な情報を引き出しておけば、届いた時に「言っていた内容と違う」と主張しやすくなります。また、スマホでメニュー写真を撮っておくことも、万が一の際の強力な証拠になります。あまりに悪質な場合は自治体の消費生活センターへ通報してください。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。