仕事に真面目に取り組むAさんは、ある日の夜に妻から「〇〇さんの旦那さんは週末に子供を公園に連れて行くんだって。うらやましいな」と言われてしまう。この言葉の裏には「それに比べてあなたは何もしてくれない」という妻からの苦言が含まれているようにAさんは感じた。
自分なりに家族を支えてきた自負があるAさんにとって、他人の夫が輝いて見えるという事実はショックだった。では、なぜ妻は他人の夫と自身の夫を比較してしまうのだろうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに聞いた。
ーなぜ妻は、夫をよその旦那さまと比較してしまうのでしょうか?
この問題の背景には、誰しもが無意識に持っている「比較の思考癖」があります。本来、比較の対象は他人ではなく「過去の自分」や「理想の自分」であるべきですが、どうしても外に見える情報で自分たちを計ってしまうのです。
特に「私ってかわいそう」という被害妄想的なフィルターがかかっていると、隣の芝生がより青く見えてしまいます。でも、それは夫を攻撃したいのではなく、自分自身の現状に何らかの満たされない思いがあるというサインなのです。
ー「隣の家はいいな」という言葉に隠された、妻の本当の欲求とは?
奥さまは「あなたはダメね」と否定したいわけではなく、実は「もっと私や子供との時間をとってほしい」「私の頑張りを認めてほしい」という切実な願いなのではないでしょうか。
Aさんは、家族のために残業して収入を増やすことを優先しているかもしれません。しかし奥さまにとっては、収入はそこそこでいいから、週末に一緒に過ごす時間がほしい…というように、理想の家庭像がズレている可能性があります。「うらやましい」という言葉は、そのズレを埋めてほしいというSOSなのです。
ー比較されて傷ついたとき、感情的にならずに本音を聞くにはどうすればいいですか?
まず、「責められた」と感じているのは自分自身の解釈だと気づくことが大切です。
最悪なのは「じゃあ、あの人と結婚すればよかったじゃないか」と怒りを露わにしてしまうこと。これでは関係が悪化するだけです。まずは「そんなふうに思っていたんだね、気づかなくてごめん」と、一旦受け止めてみてください。
その上で、「僕の今の状況をどう見ている?」「君は本当はどう過ごしたい?」と、奥さまの本音を聞くための質問を投げかけてみましょう。自分の状況を伝えていないからこそ、奥さまも無邪気に「うらやましい」と言ってしまう場合もあるからです。
ー「自分たちの良さ」を再発見する習慣をどう作ればいいでしょうか。
「察してほしい」という甘えを捨て、本音で話す習慣を持つことです。日本人は特に「言わなくてもわかってほしい」と思いがちですが、これがズレの元。Aさんも「嫌なことは嫌」「無理なことは無理」と正直に伝える強さを持ってください。
また、奥さまの「できていないこと」ではなく「してくれていること」に目を向けるのも有効です。奥さまが夕食を作ってくれること、部屋が片づいていること…そんな当たり前の中に感謝を見つけ合うことで、他家と比べる必要のない、自分たちだけの幸せの基準が育っていきます。
◆木下雅子(きのした・まさこ) 行政書士/心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。