仕事や育児に追われ、余裕がない日々を送るAさん(30代女性)は、ある夜、些細なことがきっかけで夫に強い口調で当たり、ついには人格を否定するような言葉を投げかけてしまった。夫はそれ以来、口をきいてくれない。
家庭内には重苦しい空気が流れ、Aさんは「あの時言いすぎていなければ…」と激しい後悔に苛まれている。夫の傷を癒やし、以前のような仲睦まじい関係に戻るにはどうすればいいのだろうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞いた。
ーなぜ些細なことで、夫に人格を否定するような強い口調になってしまうのでしょうか?
背景には、肉体的にも精神的にもギリギリの状態があるからだと思われます。仕事、家事、育児と、今の女性は「強くあらねばならない」というプレッシャーの中で、どうしても視野が狭くなりがちです。
そんな中、休日や夜に夫がゆっくり寝ていたり、のんびりスマホを見ていたりする姿を目にすると、「私はこんなに頑張っているのに!」と許せない気持ちになってしまうのでしょう。本当は自分も休みたいのに休めない、そのSOSが「強い言葉」となって爆発してしまうのです。
ー妻が放った「強い言葉」は、夫の心にどのようなダメージを与えるのですか?
夫からすれば、まさに「青天の霹靂(へきれき)」であることが多いです。
夫なりに「今は手を出さない方がいいかな」「自分のやり方で邪魔をしない方がいいかな」と様子を見ていたところに、突然ドーンと否定的な言葉が飛んでくる。すると夫はショックを受け、無力感や「自分は愛されていないのでは」という恐怖を感じ、自分を守るために心を閉ざして沈黙してしまうのです。
ー夫が心を閉ざしてしまった時、沈黙を破る適切なタイミングと方法は?
爆発したその日の夜に、言い訳をするのは逆効果です。お互いに疲れている時は、ネガティブな方向にしか考えがいきません。その日はそっとしておきましょう。
ポイントは「翌朝」です。起きた時に気分を切り替え、笑顔で「おはよう」と挨拶してみてください。おっかなびっくり話しかけるのではなく、何事もなかったかのように短く、要件を伝える。言い訳をせず、「昨日は言い過ぎたね、ごめんね」という1秒で済む謝罪を、まずは手短に届けることがコツです。
ーこの失敗をきっかけに、以前より深い信頼関係を築くにはどうすればいいですか?
「謝罪」と「言い訳」を混ぜないことです。人格否定をしてしまったのであれば、それは素直に謝る。その上で、自分がキャパオーバーであったことを認め、「本当はあなたを頼りにしているの」と素直な思いを伝えてください。
また、爆発する前に周囲にSOSを出すことも大切です。両親や友人に数時間でも子供を預け、一人になる時間を作ってリフレッシュする。自分が満たされていれば、夫に対しても感謝の目が向きやすくなるでしょう。
相手を変えることはできませんが、自分が変われば、鏡のように夫の態度も変わっていくでしょう。失敗を「より深い絆を築くチャンス」と捉えて、一歩踏み出してみてください。
◆木下雅子(きのした・まさこ)行政書士、心理カウンセラー
大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から、お客様を支えている。