30代の会社員Aさんは、日ごろ夜遅くに夕飯を摂り、毎日カップラーメンばかり食べる生活を送っている。近ごろは「仕事への意欲が湧かない」「些細なことで不安になる」といった慢性的な気分の落ち込みに悩まされていた。
Aさんは仕事も順調でこれといったトラブルはないが、週末にしっかり休んでも心は一向に晴れず、夜も熟睡できないようだ。Aさんのような原因不明のメンタル不調は、腸内環境の悪化が原因で引き起こされている可能性があるという。
なぜ腸内環境がメンタルにまで影響を及ぼすのだろうか。また、どうすれば腸を整えることができるのか、神奈川県横浜市にある青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックの院長、金沢憲由さんに話を聞いた。
―腸内環境の乱れが、メンタル面に影響する可能性があるのはなぜでしょうか
腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる密接な関係で結ばれています。腸内細菌は、気分に関わるセロトニンなどの神経伝達物質の産生に影響し、その多くは腸で作られます。腸内環境が乱れるとこれらのバランスが崩れ、気分の落ち込みや不安が生じやすくなります。
また、腸の炎症や悪玉菌の増加は、ストレスホルモンや免疫反応を通じて脳に影響を及ぼします。このため腸内環境の乱れがメンタル面に関与すると考えられています。
―腸内環境が乱れている場合、どのような変化が見られる可能性がありますか
腸内環境が乱れると、身体症状としては便秘や下痢、腹部膨満感、ガスの増加、肌荒れ、倦怠感などが現れやすくなります。
同時に腸脳相関の影響により、気分の落ち込み、不安感、イライラ、集中力の低下、睡眠の質の悪化といったメンタル面の変化が見られることがあります。腸内細菌のバランスの崩れが神経伝達物質や自律神経、免疫系に影響することで、心身の不調が相互に強まる悪循環に陥る可能性があるのです。
―荒れてしまった腸内環境を戻すためには、どのような食事や生活習慣が重要でしょうか
腸内環境を整えるには、善玉菌を増やす発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)や、腸内細菌のエサとなる食物繊維(野菜、果物、全粒穀物、海藻)を積極的に摂ることが重要です。加えて、過度な脂質や糖分、加工食品を控えることも大切です。
生活面では、規則正しい食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理を心がけることで自律神経が整い、腸の働きが改善します。これらを継続することが腸内環境の回復につながります。
―忙しい現代人でも手軽に取り入れられる、腸活のポイントがあれば教えてください
忙しい中でもできる腸活のポイントは、無理なく「習慣化」することです。例えば、朝にヨーグルトや納豆などの発酵食品を1品取り入れる、コンビニでもサラダや海藻、全粒パンを選ぶなど小さな工夫が有効です。
また、水分をこまめにとり、エレベーターではなく階段を使うなど軽い運動も腸を刺激します。さらに、起床後にコップ一杯の水を飲むことで腸の動きを促せます。完璧を目指さず、できることを毎日続けることが大切です。
◆金沢憲由(かなざわ・のりよし) 神奈川県横浜市青葉区、青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック院長
秋田大学医学部2007年卒業。消化器内科を中心に、一般内科から健診・人間ドックまで広く診療を扱い、年間4500件以上の内視鏡検査を行う(2025年実績)。
▽青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックホームページ
https://kanacli.jp