4月30日は“平成最後の日”となる。2019年の同日で幕を閉じた30年と4か月余りに及ぶ平成期の文化を懐かしむ「平成レトロ」という言葉は世に浸透した。だが、昭和の終盤に生まれた人たちが1989年と90年代の「平成一桁」を回顧した当初の傾向から、現在では平成生まれの世代が2000年代を回顧する流れに変わったという。その点に着目した新刊「平成レトロ博覧会」(東京キララ社)を上梓した平成文化研究家の山下メロ氏に話を聞いた。
昨年の新語・流行語大賞に「平成女児」という言葉がノミネートされた。ゼロ年代に小学生だった主に90年代生まれの20~30代女性の文化を指す。同書でもその世代が子ども時代に親しんだキャラクターグッズ、シール、学校用品などのカラー写真が数多く掲載されている。
さらに、山下氏は「平成一桁ガチババア」というネットスラングの流行も指摘。平成元年(89年)から同9年(97年)生まれの平成一桁世代(今年29~37歳)が下の世代から揶揄されたフレーズを逆手にとって自虐的にも使った。かつて「昭和ヒトケタ世代」について当たり前のように語られていた時代も遠く過ぎ去り、「平成ヒトケタ世代」を論じる時が来た。
山下氏は「前作『平成レトロの世界』(22年)では平成前半の文化を主に紹介し、2004年以降はあまり取り上げなかったんですが、今回は“平成一桁生まれの人にとっての子供時代”であるゼロ年代を中心とした平成レトロブームを受けて、平成全体を広く紹介しています」と説明した。
新刊には1666点のグッズをカラーで掲載。山下氏は「1点でも多く載せる事で(後世に)伝えるしかない。 平成の31年って短そうに感じますけど、流行の入れ替わりも速く、デジタルも含めたモノやコンテンツの量は昭和に比べて何十倍、何百倍もあり、その濃さでいうと“短い”とは言えない。だからこそ、やっていかなきゃと。気づいたら何も残っていない…というのが怖いので」と平成遺産の収集にかける執念を示した。
山下氏は1981年(昭和56年)生まれ。就職氷河期世代であり、第1次ブームの90年代後半に女子高生だった「コギャル」と同世代だ。「(元ギャル母と娘の)親子消費みたいな側面が今は強い。母親から聞いてギャル・ファッションしたりとか。あと、今の昭和レトロは80年代が主流で、聖子ちゃんカットや純喫茶でクリームソーダという感じが懐かしい…となっていて、もう『三丁目の夕日』(昭和30年代)には遡れない。レトロって時間が経てば(対象が)後にずれていきますからね」。そう指摘した山下氏に今後の「令和レトロ」、さらに平成レトロ本の第3弾について聞いた。
同氏は「令和の初期であるコロナ禍の緊急事態宣言あたりのアベノマスクとか『鬼滅の刃』の柄のマスクとかは既に懐かしい。ただ、そこそこ時間が経たないとレトロになるかは判断できないので、取っておくのはおススメしません。平成レトロは今回の2冊目までに定番のものを詰め込んだので『もう次はない』感じですが、数年経って世の中が求めるものが変わっていれば『まだいける』と思うかも。2010年代が懐かしくなっているかもしれませんし」と回答した。
さらに、山下氏は「平成二桁生まれはスマホ世代ですけど、一桁生まれはガラケー世代。二桁生まれの人に『ガラケー使ってたんだ。すごいお年なんですね』って言われちゃうみたいな」と平成の世代間ギャップも付け加えた。
一方、90年代の世紀末に起きた「悪趣味」「鬼畜」ブームも同書で「平成サブカル」としてフォロー。「危ない1号」(データハウス)といったムック本やベストセラーになった「完全自殺マニュアル」(鶴見済著、太田出版)などの書籍も紹介した。
山下氏は「『鬼畜サブカル』はその後、フタをされて『なかったこと』になっているので、ちゃんと触れておこうと。『平成ってキラキラしてポップな時代だよね』という雰囲気で語られがちですが、(世界を震撼させた殺人事件を毎週特集した)『週刊マーダーケースブック』(95~97年、デアゴスティーニ・ジャパン)みたいな本をファッションのように消費する人もいた。自分も10代終わりの多感な時にハマったので、目をつぶるわけにはいかなかった」と思いを吐露した。
昨夏、東京・渋谷で3万人以上を動員した「NEO平成レトロ展」が29日から5月18日まで神戸市の大丸神戸店・大丸ミュージアムで開催される。監修を務める山下氏は「ネットにはレトロなモノの画像はたくさん ありますが、現物を肉眼で見ることでさらに再評価へとつながっていけば」とアピールした。